労働基準法
労働基準法における船員の適用除外
○1 第1条から第11条まで、次項、第117条から第119条まで及び第121条の規定を除き、この法律は、船員法第1条第1項に規定する船員については、適用しない。
「労働基準法における船員の適用除外」の規定です。
船員法
船員法と労働基準法
労働基準法第1条から第11条まで、第116条第2項、第117条から第119条まで及び第121条の規定は、船員の労働関係についても適用があるものとする。
労働者保護法には、労働基準法があります。船員の労働関係についても、その規定の一部は準用されていますが、その大部分は船員法の適用を受けます。
船員法はどうして設けられているんですか。
船員が従事する海上における労働は、①長期間陸上から孤立している(孤立性)、②警察権が及びにくく、船外支援を受けることが難しい(自己完結性)、③海難事故や海中転落等の危険(危険性)、④労働と生活が一致した 24時間体制の就労(職住一致)といった陸上労働とは異なる「海上労働の特殊性」があるからです。 船員法及び関係法令ガイダンス
船員とは
・船長……船舶の運航の総指揮者
・海員……船内で使用される船長以外の乗組員で労働の対償として給料その他の報酬を支払われる者
・職員……航海士、機関長、機関士、通信長、通信士など
・部員……甲板長(手・員)、操機長、司厨長など
・予備船員……船員法適用船舶に乗り組むため雇用されている者で、船内で使用されていない者
(有給休暇中の船員など)
船舶とは
○2 前項に規定する船舶には、次の船舶を含まない。
1 総トン数5トン未満の船舶
2 湖、川又は港のみを航行する船舶
3 政令の定める総トン数30トン未満の漁船
4 前3号に掲げるもののほか、船舶職員及び小型船舶操縦者法第2条第4項に規定する小型船舶であつて、スポーツ又はレクリエーションの用に供するヨット、モーターボートその他のその航海の目的、期間及び態様、運航体制等からみて船員労働の特殊性が認められない船舶として国土交通省令の定めるもの
・船舶に含まれないもの
- 総トン数5トン未満の船舶
- 湖、川又は港のみを航行する船舶
- 政令の定める総トン数30トン未満の漁船
- 小型船舶でスポーツ又はレクリエーションの用
船舶にはどんな種類があるんですか。
船員保険法
船員保険法の沿革
昭和61年 平成22年
職務外年金部門 →厚生年金保険 →厚生年金保険
(厚年相当)
職務外疾病部門 →職務外疾病部門 →職務外疾病部門
(健保相当) (健保相当)
職務上・年金部門→職務外疾病部門 →独自給付
(労災+独自) (労災+独自)→労災保険
失業部門 →失業部門 →雇用保険
(雇保) (雇保)
船員保険法は、船員という特殊性にかんがみ、年金、医療、失業、労災を包括する総合保険として、1939(昭和14)年4月6日に制定され、1940(昭和15)年6月1日から施行されました。
その後昭和61年4月からは職務外の年金部門が厚生年金保険制度に統合され、平成22年1月からは職務上の疾病・年金部門(労災保険相当部分)と失業部門(雇用保険相当部分)が労災保険制度と雇用保険制度にそれぞれ統合されています。
そのため、現在は職務外疾病に関する給付(健康保険相当部分)と労災保険給付の上乗せ給付(独自給付)が行われています。
健康保険法と異なる規定(1)療養の給付
○1 被保険者又は被保険者であった者の給付対象傷病に関しては、次に掲げる療養の給付を行う。
1 診察
2 薬剤又は治療材料の支給
3 処置、手術その他の治療
4 居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護
5 病院又は診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護
6 自宅以外の場所における療養に必要な宿泊及び食事の支給
「健康保険と異なる規定(療養の給付)」です。
健康保険法と異なる規定(2)傷病手当金
○1 被保険者又は被保険者であった者が被保険者の資格を喪失する前に発した職務外の事由による疾病又は負傷及びこれにより発した疾病につき療養のため職務に服することができない期間、傷病手当金を支給する。
「健康保険と異なる規定(1)(傷病手当金)」の規定です。健康保険法と異なり、待期期間がありません。
○5 傷病手当金の支給期間は、同一の疾病又は負傷及びこれにより発した疾病に関しては、その支給を始めた日から起算して3年を超えないものとする。
「健康保険と異なる規定(2)(傷病手当金)」です。傷病手当金の支給期間1年6箇月の健康保険法と異なり、3年となります。
船員保険における独自給付(1)休業手当金
○1 休業手当金は、被保険者又は被保険者であった者が職務上の事由又は通勤による疾病又は負傷及びこれにより発した疾病につき療養のため労働することができないために報酬を受けない日について、支給する。
○2 休業手当金の額は、次の各号に掲げる期間(第2号から第4号までに掲げる期間においては、同一の事由について労働者災害補償保険法の規定による休業補償給付又は休業給付の支給を受ける場合に限る。)の区分に応じ、1日につき、当該各号に定める金額とする。
1 療養のため労働することができないために報酬を受けない最初の日から療養のため労働することができないために報酬を受けない3日間 標準報酬日額の全額
2 療養のため労働することができないために報酬を受けない4月以内の期間(前号及び第4号に掲げる期間を除く。) 標準報酬日額の100分の40に相当する金額(同一の事由について労働者災害補償保険法第29条第1項第2号に掲げる事業として支給が行われる給付金であって厚生労働省令で定めるものを受けることができるときは、当該給付の水準を勘案して、厚生労働省令で定める金額)
3 療養のため労働することができないために報酬を受けない期間であって、療養を開始した日から起算して1年6月を経過した日以後の期間(第1号及び次号に掲げる期間を除き、労働者災害補償保険法第8条の2第2項第2号に定める額が標準報酬日額より少ない場合に限る。) 標準報酬日額から同号に定める額を控除した額の100分の60に相当する金額
4 療養のため労働することができないために報酬を受けない4月以内の期間であって、療養を開始した日から起算して1年6月を経過した日以後の期間(第1号に掲げる期間を除き、標準報酬日額が労働者災害補償保険法第8条の2第2項第2号に定める額より多い場合に限る。) 前2号に定める額の合算額
「船員保険における独自給付(1)(休業手当金)」の規定です。労災保険では休業(補償)給付として1日につき給付基礎日額の60%相当額でしたが、船員保険では、これに加えて、原則として、標準報酬日額の40%相当額が支給されます。
船員保険における独自給付(2)行方不明手当金
被保険者が職務上の事由により行方不明となったときは、その期間、被扶養者に対し、行方不明手当金を支給する。ただし、行方不明の期間が1月未満であるときは、この限りでない。
行方不明手当金の額は、1日につき、被保険者が行方不明となった当時の標準報酬日額に相当する金額とする。
行方不明手当金の支給を受ける期間は、被保険者が行方不明となった日の翌日から起算して3月を限度とする。
「船員保険における独自給付(2)(行方不明手当金)」の規定です。
労災保険法
次に掲げる事業以外の事業であつて、政令で定めるものは、当分の間、第2条の規定による改正後の労働者災害補償保険法第3条第1項の適用事業としない。
1 第2条の規定による改正前の労働者災害補償保険法第3条第1項に規定する事業
2 労働者災害補償保険法第35条第1項第3号の規定の適用を受ける者のうち同法第33条第3号又は第5号に掲げる者が行う当該事業又は当該作業に係る事業(その者が同法第35条第1項第3号の規定の適用を受けなくなつた後引き続き労働者を使用して行う事業を含む。)であつて、農業(畜産及び養蚕の事業を含む。)に該当するもの
2 前項の政令で定める事業は、任意適用事業とする。
失業保険法及び労働者災害補償保険法の一部を改正する法律附則第12条第1項の政令で定める事業は、次の各号に掲げる事業(都道府県、市町村その他これらに準ずるものの事業、法人である事業主の事業、船員法第1条に規定する船員を使用して行う船舶所有者の事業及び労働者災害補償保険法第7条第1項第1号に規定する業務災害の発生のおそれが多いものとして厚生労働大臣が定める事業を除く。)のうち、常時5人以上の労働者を使用する事業以外の事業とする。
1 土地の耕作若しくは開墾又は植物の栽植、栽培、採取若しくは伐採の事業その他農林の事業
2 動物の飼育又は水産動植物の採捕若しくは養殖の事業その他畜産、養蚕又は水産の事業
労災保険法において、船員法1条に規定する船員を使用して行う船舶所有者の事業については、適用事業とすることが規定されています。
雇用保険法
雇用保険法における船員の適用除外
次に掲げる者については、この法律は、適用しない。
1 1週間の所定労働時間が20時間未満である者(この法律を適用することとした場合において第43条第1項に規定する日雇労働被保険者に該当することとなる者を除く。)
2 同一の事業主の適用事業に継続して31日以上雇用されることが見込まれない者(前2月の各月において18日以上同一の事業主の適用事業に雇用された者及びこの法律を適用することとした場合において第42条に規定する日雇労働者であつて第43条第1項各号のいずれかに該当するものに該当することとなる者を除く。)
3 季節的に雇用される者であつて、第38条第1項各号のいずれかに該当するもの
4 学校教育法(昭和22年法律第26号)第1条、第124条又は第134条第1項の学校の学生又は生徒であつて、前3号に掲げる者に準ずるものとして厚生労働省令で定める者
5 船員法第1条に規定する船員であつて、漁船(政令で定めるものに限る。)に乗り組むため雇用される者(1年を通じて船員として適用事業に雇用される場合を除く。)
6 国、都道府県、市町村その他これらに準ずるものの事業に雇用される者のうち、離職した場合に、他の法令、条例、規則等に基づいて支給を受けるべき諸給与の内容が、求職者給付及び就職促進給付の内容を超えると認められる者であつて、厚生労働省令で定めるもの
船員法第1条に規定する船員であつて、漁船(政令で定めるものに限る。)に乗り組むため雇用される者(1年を通じて船員として適用事業に雇用される場合を除く。)は、雇用保険法においては、適用除外とされています。「漁船」といっていますので、「商船」に乗り組むため雇用される者は適用されることになります。
健康保険法
健康保険法における船員の適用除外
この法律において「被保険者」とは、適用事業所に使用される者及び任意継続被保険者をいう。ただし、次の各号のいずれかに該当する者は、日雇特例被保険者となる場合を除き、被保険者となることができない。
1 船員保険の被保険者(船員保険法第2条第2項に規定する疾病任意継続被保険者を除く。)
健康保険(職務外疾病部門)については、船員保険法の適用を受けますので、適用除外となります。ただし、日雇特例被保険者となる場合、疾病任意継続被保険者は除かれます。
厚生年金保険法
厚生年金保険法における適用
○1 次の各号のいずれかに該当する事業所若しくは事務所(以下単に「事業所」という。)又は船舶を適用事業所とする。
1 次に掲げる事業の事業所又は事務所であつて、常時5人以上の従業員を使用するもの
2 前号に掲げるもののほか、国、地方公共団体又は法人の事業所又は事務所であつて、常時従業員を使用するもの
3 船員法第1条に規定する船員(以下単に「船員」という。)として船舶所有者(船員保険法第3条に規定する場合にあつては、同条の規定により船舶所有者とされる者。以下単に「船舶所有者」という。)に使用される者が乗り組む船舶(第59条の2を除き、以下単に「船舶」という。)
○2 前項第3号に規定する船舶の船舶所有者は、適用事業所の事業主とみなす。
厚生年金保険においては、船舶は適用事業となります。健康保険法の適用は除外されますが、厚生年金保険法は適用されます。
厚生年金保険法における適用除外
次の各号のいずれかに該当する者は、第9条及び第10条第1項の規定にかかわらず、厚生年金保険の被保険者としない。
1 臨時に使用される者(船舶所有者に使用される船員を除く。)であつて、次に掲げるもの。ただし、イに掲げる者にあつては1月を超え、ロに掲げる者にあつては所定の期間を超え、引き続き使用されるに至つた場合を除く。
イ 日々雇い入れられる者
ロ 2月以内の期間を定めて使用される者
2 所在地が一定しない事業所に使用される者
3 季節的業務に使用される者(船舶所有者に使用される船員を除く。)。ただし、継続して4月を超えて使用されるべき場合は、この限りでない。
4 臨時的事業の事業所に使用される者。ただし、継続して6月を超えて使用されるべき場合は、この限りでない。
「臨時に使用される者や季節的業務に使用される者」であっても、船舶所有者に使用される船員については、適用除外とはならないことに注意をしてください。