1 基本給体系を類型化すると、次の三つの性格の賃金を組み合わせているケースが多い。
まず第一は A 給で、勤続年数、年齢、学歴等の労働者の諸条件を基準に決定される賃金である。これは、従来日本では最も一般的に存在してきたものであり、中でも年齢や勤続年数が重要視されてきたので、年功給とか年功賃金などという言葉が用いられたりした。
また第二は B 給で、 B の困難度や重要度を評価要素として B の相対的価値を評価し、これによって決定される賃金である。したがって、同じ B に就く労働者であれば年齢や学歴を問わず同じ賃金を支給するのがその本質である。
また第三は C 給で、労働者の B の遂行能力によって決定される賃金である。例えば、職級や資格を設け、その職級や資格に属していれば役職に就いているかどうかにかかわりなく、同等の給与を支給するというものである。
この B 給と C 給を合わせて仕事給と称するが、外国に比べて横断的な労働市場が形成されず、従業員が企業内に封入されがちな日本では、能力に応じた B が必ずしも与えられるとは限られず、また、 B の内容の困難度や責任の厳密な分析評価は煩雑であることから、 C 給が採用され易いという事情がある。
2 D とベースアップは、同じく給与の増額を指すものであり、また、時を同じくして行われることが多いが、本来全く異なるものである。
すなわち、 D が、一定期間企業に勤務し、一定の条件を満たした従業員に、あらかじめ定められた基準に従って毎年一定の時期に個別に賃金を引き上げるものであるのに対して、ベースアップは、多くの場合は労使交渉に基づいて、あらかじめ定めていない額について、企業の賃金水準そのものを変更するものである。
最近の我が国では、労働者の高齢化を反映して、50歳から55歳前後で D を逓減ないし停止する等により、年功賃金制の修正を試みる企業が増えている。3賃金総額の決定には、労働生産性との関連を考慮することが重要である。これを検討する場合に、一つの基礎的指標となるのが E であり、この指標を企業経営ベースで計算すると、企業が支払った人件費の総額を企業の生み出した付加価値の総額で割ったものとなる。
B→職務
C→職能
D→定期昇給
E→労働分配率