東都観光バス事件

東都観光バス事件

昭和58年4月19日最高裁判所第三小法廷
ストーリー
 労働者Xは、観光バス会社Y社のバス運転手である。労働者Xは、運転手Aの副運転手としての乗務中に運転手Aの過失により左足をひかれる事故にあった。
 労働者Xは、Y社に対して、①後遺症による逸失利益、②慰謝料、③弁護士費用の支払いを求めたが、二審は①を認めず、②及び③を認容した。②の慰謝料については200万円としたうえで、労働者Xの過失(2割)も同時に認め160万円に減額したうえで、ここから運転手Aからの見舞金7万円、障害補償一時金約14万円、及び休業補償給付等の額に過失割合を考慮した金額を控除した残額約126万円の支払いをY社に命じた。労働者Xは、この取扱いを不服とし、訴えを提起した。

 

事故に対する慰謝料を要求します。

 

労災保険から保険給付を受けているのだから、

その分は慰謝料を減額させてもらいます。

 

 結 論  労働者X勝訴
 労災保険給付は、被災労働者等の財産的損害を補償することを目的としているため、慰謝料等には影響を与えないことから、被災労働者等は保険給付との調整とは無関係に慰謝料等を請求できる。   青木鉛鉄事件
 
 
 

精神的損害に対する損害賠償である「慰謝料」の性格をもった

保険給付は労災保険にはありません。

どんなに労災保険から給付を受けても、慰謝料は別に全額請求

することができます。

労災保険給付と慰謝料にはどんな関係があるか。

 労働者に対する災害補償は、労働者の被った財産上の損害の填補のためにのみされるものであって、精神上の損害の填補の目的をも含むものではないから、前記Xが受領した労災保険による障害補償一時金及び休業補償金のごときはXの財産上の損害の賠償請求権にのみ充てられるべき筋合のものであって、Xの慰謝料請求権には及ばないものというべきであり、従ってXが右各補償金を受領したからといってその全部ないし一部をXの被った精神上の損害を填補すべきものとして認められた慰謝料から控除することは許されないというべきである。
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 労働者に対する災害補償は、労働者の被った財産上の損害の填補のためにのみされるものであって、精神上の損害の填補の目的をも含むものではないから、前記Xが受領した労災保険による障害補償一時金及び休業補償金のごときはXの財産上の損害の賠償請求権にのみ充てられるべき筋合のものであって、Xの慰謝料請求権には及ばないものというべきであり、従ってXが右各補償金を受領したからといってその全部ないし一部をXの被った精神上の損害を填補すべきものとして認められた慰謝料から控除することは許されないというべきである。

 

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