目黒電報電話局事件

目黒電報電話局事件

昭和52年12月13日最高裁判所第三小法廷
ストーリー
 Y公社に勤務する労働者Xは、「ベトナム侵略反対、米軍立川基地拡張阻止」と書いたプレートを着用して勤務していた。上司はとりはずすよう注意をしたが、従わなかった。さらに、労働者Xは、とりはずし命令に抗議する目的で、休憩時間中に、「職場のみなさんへの訴え」と題するビラを、休憩室及び食堂で職員に配布した。
 Y公社は、労働者Xの行為は就業規則の規定に違反し、懲戒理由に該当するとして、労働者Xを懲戒処分とした。Xは懲戒処分の無効確認を求めて訴えを提起した。

 

許可なくビラを配布したことは、懲戒事由に

該当します。

 

「休憩時間の自由利用」は認められています。

ビラを配ってどうして悪いんですか。

 

 結 論  労働者X敗訴
 プレートの着用は、就業規則における「局所内において、選挙活動その他の政治活動をしてはならない」に違反し、取外命令に対するビラ配布行為は「局所内において、演説、集会、貼紙、掲示、ビラの配布その他これに類する行為をしようとするときは、事前に別に定めるその局所の管理責任者の許可を受けなければならない」にそれぞれ違反しており、これらの行為に対する懲戒処分も、最も軽い「戒告処分」であったことから処分相当である。

休憩時間中のビラ配布を許可制とすることは、休憩時間の自由利用の原則に反するか。

 Xは、本件ビラ配布は正午の休憩時間を利用して行ったものであるのにこれを懲戒処分の対象とすることは、労基法34条3項に違反する、と主張する。一般に、雇用契約に基づき使用者の指揮命令、監督のもとに労務を提供する従業員は、休憩時間中は、労基法34条3項により、使用者の指揮命令権の拘束を離れ、この時間を自由に利用することができ、もとよりこの時間をビラ配り等のために利用することも自由であって、使用者が従業員の休憩時間の自由利用を妨げれば労基法34条3項違反の問題を生じ、休憩時間の自由利用として許される行為をとらえて懲戒処分をすることも許されないことは、当然である。
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 Xは、本件ビラ配布は正午の休憩時間を利用して行ったものであるのにこれを懲戒処分の対象とすることは、労基法34条3項に違反する、と主張する。一般に、雇用契約に基づき使用者の指揮命令、監督のもとに労務を提供する従業員は、休憩時間中は、労基法34条3項により、使用者の指揮命令権の拘束を離れ、この時間を自由に利用することができ、もとよりこの時間をビラ配り等のために利用することも自由であって、使用者が従業員の休憩時間の自由利用を妨げれば労基法34条3項違反の問題を生じ、休憩時間の自由利用として許される行為をとらえて懲戒処分をすることも許されないことは、当然である。

 
 
 休憩時間の自由利用といってもそれは時間を自由に利用することが認められたものにすぎず、その時間の自由な利用が企業施設内において行われる場合には、使用者の企業施設に対する管理権の合理的な行使として是認される範囲内の適法な規制による制約を免れることはできない。また従業員は労働契約上企業秩序を維持するための規律に従うべき義務があり、休憩中は労務提供とそれに直接附随する職場規律に基づく制約は受けないが、右以外の企業秩序維持の要請に基づく規律による制約は免れない。
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 休憩時間の自由利用といってもそれは時間を自由に利用することが認められたものにすぎず、その時間の自由な利用が企業施設内において行われる場合には、使用者の企業施設に対する管理権の合理的な行使として是認される範囲内の適法な規制による制約を免れることはできない。また従業員は労働契約上企業秩序を維持するための規律に従うべき義務があり、休憩中は労務提供とそれに直接附随する職場規律に基づく制約は受けないが、右以外の企業秩序維持の要請に基づく規律による制約は免れない。

 
 
 局所内において演説、集会、貼紙、掲示、ビラ配布等を行うことは、休憩時間中であっても、局所内の施設の管理を妨げるおそれがあり、更に、他の職員の休憩時間の自由利用を妨げ、ひいてはその後の作業能率を低下させるおそれがあって、その内容いかんによっては企業の運営に支障をきたし企業秩序を乱すおそれがあるのであるから、これを局所管理者の許可にかからせることは、前記のような観点に照らし、合理的な制約ということができる。本件ビラの配布は、その態様において直接施設の管理に支障を及ぼすものでなかったとしても、前記のように、その目的及びビラの内容において上司の適法な命令に対し抗議をするものであり、また、違法な行為をあおり、そそのかすようなものであった以上、休憩時間中であっても、企業の運営に支障を及ぼし企業秩序を乱すおそれがあり、許可を得ないでその配布をすることは公社就業規則5条6項に反し許されるべきものではないから、これをとらえて懲戒処分の対象としても、労基法34条3項に違反するものではない。
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 局所内において演説、集会、貼紙、掲示、ビラ配布等を行うことは、休憩時間中であっても、局所内の施設の管理を妨げるおそれがあり、更に、他の職員の休憩時間の自由利用を妨げ、ひいてはその後の作業能率を低下させるおそれがあって、その内容いかんによっては企業の運営に支障をきたし企業秩序を乱すおそれがあるのであるから、これを局所管理者の許可にかからせることは、前記のような観点に照らし、合理的な制約ということができる。本件ビラの配布は、その態様において直接施設の管理に支障を及ぼすものでなかったとしても、前記のように、その目的及びビラの内容において上司の適法な命令に対し抗議をするものであり、また、違法な行為をあおり、そそのかすようなものであった以上、休憩時間中であっても、企業の運営に支障を及ぼし企業秩序を乱すおそれがあり、許可を得ないでその配布をすることは公社就業規則5条6項に反し許されるべきものではないから、これをとらえて懲戒処分の対象としても、労基法34条3項に違反するものではない。

 

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過去問

rkh2804E労働基準法第34条に定める休憩時間は、労働者が自由に利用することが認められているが、休憩時間中に企業施設内でビラ配布を行うことについて、就業規則で施設の管理責任者の事前の許可を受けなければならない旨を定めることは、使用者の企業施設管理権の行使として認められる範囲内の合理的な制約であるとするのが、最高裁判所の判例である。
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労働基準法(第4章-労働時間①)rkh2804E
休憩時間の自由利用は、時間を自由に利用することが認められたものにすぎず、その時間の自由な利用が企業施設内において行われる場合には、使用者の企業施設に対する管理権の合理的な行使として是認される範囲内の適法な規制による制約を免れることはできないため、企業施設内において演説、集会、貼紙、掲示、ビラ配布等を行うことは、休憩時間中であっても、施設の管理を妨げるおそれがあり、更に、他の職員の休憩時間の自由利用を妨げ、ひいてはその後の作業能率を低下させるおそれがあって、その内容いかんによっては企業の運営に支障をきたし企業秩序を乱すおそれがあるのであるから、これを施設管理者の許可にかからせることは、合理的な制約ということができるとするのが最高裁判所の判例である。

 

rkh2004C使用者は、労働基準法第34条第3項に基づき、休憩時間を自由に利用させなければならないこととされており、使用者がその労働者に対し休憩時間内に職場内で政治活動を行うことを禁止することは許されないとするのが最高裁判所の判例である。
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