小倉電話局事件

小倉電話局事件

昭和43年3月12日最高裁判所第三小法廷
ストーリー
 Y公社に勤務して、定年間近の労働者Xがある事情から同僚Aに損害賠償をしなければならないこととなり、弁護士を交えて話し合いの結果、労働者XがY公社から支給される退職金の一部を労働者Xから弁護士へ、弁護士からAへ債権譲渡することとなり、Y公社にもこの旨通知された。
 ところが、労働者XはY公社に対しこの債権譲渡は同僚Aの強迫によりされたものであるとして債権譲渡の取消の意思表示をし、その旨をY公社に通知した。
 Y公社は退職金を全額を労働者Xに支給したため、AはY公社を相手どって退職金の一部の支払を求めて訴えを提起した。

労働者Xの意向に従い、退職金は、

X本人に全額支払いました。

退職金の一部の譲渡を受けています。

どうして私に支払ってくれないんですか。

 結  論  同僚A敗訴
 労働者が退職金の支払を受ける前にそれを他に譲渡した場合においても、賃金の「直接払」の原則は適用されるため、使用者は直接労働者に退職金を支払わなければならず、退職金の譲受人が直接使用者に対してその支払いを求めることは許されない。
 

退職手当の受給権を譲渡された場合、会社に対し支払いを求めることはできるか。

 退職手当法による退職手当の給付を受ける権利については、その譲渡を禁止する規定がないから、退職者またはその予定者が右退職手当の給付を受ける権利を他に譲渡した場合に譲渡自体を無効と解すべき根拠はないけれども、労働基準法24条1項が「賃金は直接労働者に支払わなければならない」旨を定めて、使用者たる賃金支払義務者に対し罰則をもってその履行を強制している趣旨に徴すれば、労働者が賃金の支払を受ける前に賃金債権を他に譲渡した場合においても、その支払についてはなお同条が適用され、使用者は直接労働者に対し賃金を支払わなければならず、したがって、右賃金債権の譲受人は自ら使用者に対してその支払を求めることは許されないものと解するのが相当である
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 退職手当法による退職手当の給付を受ける権利については、その譲渡を禁止する規定がないから、退職者またはその予定者が右退職手当の給付を受ける権利を他に譲渡した場合に譲渡自体を無効と解すべき根拠はないけれども、労働基準法24条1項が「賃金は直接労働者に支払わなければならない」旨を定めて、使用者たる賃金支払義務者に対し罰則をもってその履行を強制している趣旨に徴すれば、労働者が賃金の支払を受ける前に賃金債権を他に譲渡した場合においても、その支払についてはなお同条が適用され、使用者は直接労働者に対し賃金を支払わなければならず、したがって、右賃金債権の譲受人は自ら使用者に対してその支払を求めることは許されないものと解するのが相当である。

 
 
 退職手当法による退職手当もまた右にいう賃金に該当し、右の直接払の原則の適用があると解する以上、退職手当の支給前にその受給権が他に適法に譲渡された場合においても、国または公社はなお退職者に直接これを支払わなければならず、したがって、その譲受人から国または公社に対しその支払を求めることは許されないといわなければならない。したがって、本件退職手当金の支払については、労働基準法24条1項本文の規定が適用される結果、Aにおいて、Xに対する退職手当の受給権を譲り受けたとしても、Y公社に対し直接その支払を求めることは許されないとした原審の判断は、結論において正当である。
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 退職手当法による退職手当もまた右にいう賃金に該当し、右の直接払の原則の適用があると解する以上、退職手当の支給前にその受給権が他に適法に譲渡された場合においても、国または公社はなお退職者に直接これを支払わなければならず、したがって、その譲受人から国または公社に対しその支払を求めることは許されないといわなければならない。したがって、本件退職手当金の支払については、労働基準法24条1項本文の規定が適用される結果、Aにおいて、Xに対する退職手当の受給権を譲り受けたとしても、Y公社に対し直接その支払を求めることは許されないとした原審の判断は、結論において正当である。
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過去問

rkh2803B労働者が賃金の支払を受ける前に賃金債権を他に譲渡した場合でも、使用者は当該賃金債権の譲受人に対してではなく、直接労働者に対し賃金を支払わなければならないとするのが、最高裁判所の判例である。
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労働基準法(第3章-賃金)rkh2803B
労働者は民法の原則に従い、自己の賃金債権を第三者に譲渡することができるが、賃金債権が譲渡された場合であっても、譲受人への支払は法24条(直接払の原則)違反となるので、使用者は譲受人たる労働者に対して支払わなければならないとするのが最高裁判所の判例である。

 

rkh2104C労働者が賃金債権を第三者に譲渡した場合、譲渡人である労働者が債務者である使用者に確定日付のある証書によって通知した場合に限り、賃金債権の譲受人は使用者にその支払を求めることが許されるとするのが最高裁判所の判例である。
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rks5706A退職金債権を第三者に譲渡したので、その者に支払って欲しい旨の申し出があったが、これには応じなかった。これは、労働基準法違反とならない。
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rks48K退職金規程により支給される退職金について、労働者が第三者に債権譲渡した場合、この第三者からの支払い請求を受けた使用者が、第三者に退職金を支払うことは rks48K 
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直接払の原則に反することとなり、この行為は禁止されている。

 

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