三晃社事件
昭和52年8月9日最高裁判所第二小法廷
ストーリー
広告代理店Y社の就業規則に基づく退職金規定によれば、退職後同業他社へ転職のときは自己都合退職の2分の1の乗率で退職金が計算されるものと規定されていた。
労働者Xは、退職し自己都合退職率に基づいて退職金を受領したが、その際、「今後同業他社に就職した場合には退職金の半額を返還する」旨を約束した。
ところが、労働者Xは退職後同業他社に就職しており、これを知ったY社は、労働者Xには退職金の半額を返還すべき義務があるとして、返還請求の訴えを提起した。
広告代理店Y社の就業規則に基づく退職金規定によれば、退職後同業他社へ転職のときは自己都合退職の2分の1の乗率で退職金が計算されるものと規定されていた。
労働者Xは、退職し自己都合退職率に基づいて退職金を受領したが、その際、「今後同業他社に就職した場合には退職金の半額を返還する」旨を約束した。
ところが、労働者Xは退職後同業他社に就職しており、これを知ったY社は、労働者Xには退職金の半額を返還すべき義務があるとして、返還請求の訴えを提起した。
ライバル会社に就職したなら、
約束通り、退職金の半額を返して下さい。
退職金は賃金です。労働基準法16条の
「賠償予定の禁止」に違反するのでは。
結 論 (労働者X敗訴)
退職後の同業他社への就職をある程度の期間制限することは、直ちに職員の職業の自由等を不当に拘束するものとは認められない(一定の要件の下、競業避止規定を設けることはできる。)。退職金は功労報償的な性格をあわせもつことから、「同業他社に就職した退職社員に対する退職金を半額とする」ことも合理性のない措置とはいえない。
退職後の同業他社への就職をある程度の期間制限することは、直ちに職員の職業の自由等を不当に拘束するものとは認められない(一定の要件の下、競業避止規定を設けることはできる。)。退職金は功労報償的な性格をあわせもつことから、「同業他社に就職した退職社員に対する退職金を半額とする」ことも合理性のない措置とはいえない。
同業他社に就職した退職者の退職金を減額することはできるか。
Y社が営業担当社員に対し退職後の同業他社への就職をある程度の期間制限することをもって直ちに社員の職業の自由等を不当に拘束するものとは認められず、したがって、Y社がその退職金規則において、右制限に反して同業他社に就職した退職社員に支給すべき退職金につき、その点を考慮して、支給額を一般の自己都合による退職の場合の半額と定めることも、本件退職金が功労報償的な性格を併せ有することにかんがみれば、合理性のない措置であるとすることはできない。すなわち、この場合の退職金の定めは、制限違反の就職をしたことにより勤務中の功労に対する評価が減殺されて、退職金の権利そのものが一般の自己都合による退職の場合の半額の限度においてしか発生しないこととする趣旨であると解すべきであるから、右の定めは、その退職金が労働基準法上の賃金にあたるとしても、所論の同法3条(均等待遇)、16条(賠償予定の禁止)、24条(賃金の支払)及び民法90条(公序良俗)等の規定にはなんら違反するものではない。
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Y社が営業担当社員に対し退職後の同業他社への就職をある程度の期間制限することをもって直ちに社員の職業の自由等を不当に拘束するものとは認められず、したがって、Y社がその退職金規則において、右制限に反して同業他社に就職した退職社員に支給すべき退職金につき、その点を考慮して、支給額を一般の自己都合による退職の場合の半額と定めることも、本件退職金が功労報償的な性格を併せ有することにかんがみれば、合理性のない措置であるとすることはできない。すなわち、この場合の退職金の定めは、制限違反の就職をしたことにより勤務中の功労に対する評価が減殺されて、退職金の権利そのものが一般の自己都合による退職の場合の半額の限度においてしか発生しないこととする趣旨であると解すべきであるから、右の定めは、その退職金が労働基準法上の賃金にあたるとしても、所論の同法3条(均等待遇)、16条(賠償予定の禁止)、24条(賃金の支払)及び民法90条(公序良俗)等の規定にはなんら違反するものではない。
過去問
rkh0902A就業規則において、退職後一定期間同業他社への就職を禁止することは、社員の職業選択の自由を不当に拘束するものとは必ずしもいえないが、同業他社への就職を理由として退職金を減額する旨の規定は著しく不合理であって、公序良俗に反し無効である。
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労働基準法(第3章-賃金)rkh0902A
退職後の同業他社への就職をある程度の期間制限することは、直ちに職員の職業の自由等を不当に拘束するものとは認められない(一定の要件の下、競業避止規定を設けることはできる)。退職金は功労報償的な性格をあわせもつことから、「同業他社に就職した退職社員に対する退職金を半額とする」ことも合理性のない措置とはいえないとするのが最高裁判所の判例である。