労働基準法(第4章-労働時間②)rkh1707B

★★ rkh1707B年間賃金額を予め定めるいわゆる年俸制を採用する事業場において、就業規則により、決定された年俸の16分の1を月例給与とし、決定された年俸の16分の4を2分して6月と12月にそれぞれ賞与として支給し、他に交通費実費分の通勤手当を月々支給することを定めて支給しているような場合には、割増賃金の支払いは、月例給与に賞与部分を含めた年俸額を基礎として計算をして支払わなければならない。
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○正解
 いわゆる年俸制の適用を受ける労働者の割増賃金について、支給額が確定している賞与は「賞与」とはみなされないことから、毎月払部分と賞与部分を合計してあらかじめ年俸額が確定している場合の賞与部分は、支給額が確定されていない賃金に該当せず、賞与部分を含めて当該確定した年俸額を算定の基礎として割増賃金を支払う必要がある
詳しく
(平成12年3月8日基収78号)
(問)
 今般、年間賃金額を予め定めるいわゆる年俸制の適用を受ける労働者に係る割増賃金及び平均賃金の算定についての疑義が生じたところであり、当該各事案に対し、別添のとおり解してよろしいか、御教示いただきたくお伺いします。
 なお、対象労働者は、労働基準法第41条第二号に該当する監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者に該当しない者です。
1 支給額が予め確定している賞与について
 [1] 事案
 次に掲げる就業規則により賃金を支払っている。
 支給額が予め確定している賞与を割増賃金の算定の基礎となる賃金から除外しているが、この取扱い如何。また、平均賃金の算定について如何。
 (年俸制)
 第○条 給与は年俸により定める。
 (給与の支払方法)
 第○条 決定された年俸の17分の1を、月例給与として支給する。
   2 決定された年俸の17分の5を2分して、6月と12月に賞与として支給する。 (給与の区分)
 第○条 社員の給与の区分は次のとおりとする。
 (1) 基本給(年俸の17分の1)
 (2) 通勤手当
 (3) 割増賃金
 (4) 賞与(年俸の17分の2.5×年2回)
 (割増賃金)
 第○条 業務の都合により所定の就業時間外又は休日に勤務した場合に、時間外手当、休日出勤手当を次のとおり支給する。
 (1) 基礎額
 1時間当たりの基礎額は、次の方法により算定する。
 基本給÷150時間/月(円未満切り上げ)
 (2) 通常時間外手当
 始業時間前の勤務並びに始業時間より実働8時間以降の勤務に対し、1時間当たり基礎額の2割5分増を支給する。
 (3) 深夜・早朝時間外勤務手当
 (以下略)
 (賞与)
 第○条 賞与は年2回、6月(支給対象期間:前年11月1日より当年4月末日まで)及び12月(支給対象期間:当年5月1日より当年10月末日まで)に支給する。
2. 賞与は支給対象期間の在籍者に支給する。
3. 賞与は支給対象期間内に入社又は退職した社員に対しては、対象期間の出勤日数に応じ按分して支給する。
 [2] 当局見解
① 割増賃金の算定について(労働基準法第37条)
 割増賃金の基礎となる賃金に算入しない賃金の一つである「賞与」とは支給額が予め確定されていないものをいい、支給額が確定しているものは「賞与」とみなされない(昭22.9.13発基17号)としているので、年俸制で毎月払い部分と賞与部分を合計して予め年俸額が確定している場合の賞与部分は上記「賞与」に該当しない。したがって、賞与部分を含めて当該確定した年俸額を算定の基礎として割増賃金を支払う必要がある。
 よって、事案の場合、決定された年俸額の12分の1を月における所定労働時間数(月によって異なる場合には、1年間における1カ月平均所定労働時間数)で除した金額を基礎額とした割増賃金の支払いを要し、就業規則で定めた計算方法による支払額では不足するときは、労働基準法第37条違反として取り扱うこととする
② 平均賃金の算定について(労働基準法第12条)
 予め年俸額が確定している年俸制における平均賃金の算定については、上記①と同様に解し、事案の場合、賞与部分を含めた年俸額の12分の1を1カ月の賃金として平均賃金を算定するものであると解する。
2 割増賃金を含めた年俸について
 [1] 事案
次に掲げる労働契約により賃金を支払っている。
年俸には割増賃金を含むものとしている場合の取扱い如何。
(労働契約書の内容)
第○条 年俸○○○円とする。
第○条 業務は○○○とする。
 (口頭による労働契約の内容)
 所定労働時間の範囲内で業務完遂することは予定しておらず、具体的な見込時間数は定めないが、前年度実績程度の時間外・休日労働(例えば年間時間外労働100時間、休日労働月1回)は発生することを前提とする。年俸○○○円には、時間外・休日労働の割増賃金を含むものとする。
 その他の事情
 1. 年俸制適用、業務内容・年俸額決定の際には労使当事者間で交渉を積み重ねており、上記の内容は労使双方認識している。
 2. 年俸額は900~1,000万円程度で、社内では管理職扱いされている。
 [2] 当局見解
 割増賃金の算定について(労働基準法第37条)
 一般的には、年俸に時間外労働等の割増賃金が含まれていることが労働契約の内容であることが明らかであって、割増賃金相当部分と通常の労働時間に対応する賃金部分とに区別することができ、かつ、割増賃金相当部分が法定の割増賃金額以上支払われている場合は労働基準法第37条に違反しないと解される。
 事案の場合、割増賃金相当部分と通常の労働時間に対応する賃金部分とを明確に区別していないが、当該労働者の前年度実績からみて一定の時間外労働等が存在することが想定され、その分の割増賃金を含めて年俸額が決められていることは労使双方認識しているところである。
 よって、事案の場合、労働基準法第37条違反とは取り扱わないこととするが、労働契約の締結に際し賃金の決定・計算の方法及び所定労働時間を超える労働の有無について書面の交付により明示していないことについて労働基準法第15条第1項違反として取り扱うこととする。
 なお、年俸に割増賃金を含むとしていても、割増賃金相当額がどれほどになるのかが不明であるような場合及び労使双方の認識が一致しているとは言い難い場合については、労働基準法第37条違反として取り扱うこととする。

(答)
 平成12年2月22日付け東基発第111号により照会のあった標記の件について、下記のとおり回答する。

1 事案1について、割増賃金及び平均賃金の算定とも、貴局見解のとおり
 なお、事案1で賞与として支払われている賃金は、労働基準法施行規則第21条第四号の「臨時に支払われた賃金」及び同条第五号の「1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金」のいずれにも該当しないものであるから、割増賃金の算定基礎から除外できないものであることを申し添える。
2 事案2について、基本的に貴局見解のとおりであるが、年間の割増賃金相当額に対応する時間数を超えて時間外労働等を行わせ、かつ、当該時間数に対応する割増賃金が支払われていない場合は、労働基準法第37条違反となることに留意されたい。また、あらかじめ、年間の割増賃金相当額を各月均等に支払うこととしている場合において、各月ごとに支払われている割増賃金相当額が、各月の時間外労働等の時間数に基づいて計算した割増賃金額に満たない場合も、同条違反となることに留意されたい。

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