就業規則、寄宿舎等
就業規則
就業規則の作成
就業規則
- [0806] 「就業規則」とは、労働者の就業上遵守すべき規律及び労働条件に関する具体的細目について定めた規則類の総称である。(コンメンタール89条)
就業規則の作成・届出
- [0807] 常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成し、所轄労働基準監督署長に届け出なければならない。就業規則の記載事項を変更した場合においても同様である。(法89条)
就業規則と労働契約書の関係
- [0808] 就業規則の所定の事項を個々の労働契約書に網羅して記載してあっても、使用者は、就業規則の作成の義務を免れるものではない。(コンメンタール89条)
労働者
- [0809] 「労働者」とは、当該事業場に使用されているすべての労働者をいい、正規従業員だけでなく臨時的・短期的な雇用形態の労働者はもちろん、他社への派遣中の労働者も含まれる。したがって、これらの労働者をすべて合わせて10人以上であれば、就業規則を作成し届け出なければならない。(昭和61年6月6日基発333号)
常時10人以上
- [0810] 常時10人以上の労働者を使用する使用者は就業規則を作成する義務を負うが、「常時10人以上の労働者を使用する」とは、時としては10人未満になることはあっても、常態として10人以上の労働者を使用しているという意味である。したがって、常時は8人であっても、繁忙期等においてさらに2、3人雇い入れるという場合は、含まれない。(コンメンタール89条)
- [0811] 「常時10人以上の労働者」を使用しているか否かは、企業単位にみるべきか、個々の事業場単位にみるべきかという問題があるが、「事業場単位」で判断すべきものと解される。(コンメンタール89条)
派遣労働者に対する就業規則の作成義務
- [0812] 派遣労働者に関して、就業規則の作成義務を負うのは、派遣中の労働者とそれ以外の労働者とを合わせて常時10人以上の労働者を使用している派遣元の使用者である。(昭和61年6月6日基発333号)
就業規則の対象労働者
- [0813] 就業規則は当該事業場の全労働者について作成する必要があり、本工については作成しているが臨時工やパートタイム労働者については作成していないという場合は、法違反となる。(コンメンタール89条)
別個の就業規則
- [0814] 使用者は、パートタイム労働者など当該事業場の労働者の一部について、他の労働者と異なる労働条件を定める場合には、当該一部の労働者にのみ適用される別個の就業規則を作成することができる。(昭和63年3月14日基発150号、平成11年3月31日基発168号)
就業規則の記載事項
- [0815] 使用者が就業規則に記載すべき事項には、いかなる場合であっても必ず記載しなければならない事項(いわゆる絶対的必要記載事項)と、その事項について定めをする場合には必ず記載しなければならない事項(いわゆる相対的必要記載事項)とがある。(コンメンタール89条)
就業規則の必要記載事項
- [0816] 就業規則の絶対的必要記載事項は、次の通りである。(法89条1号~3号)
就業規則の絶対的必要記載事項 |
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- [0817] 就業規則の相対的必要記載事項は、次の通りである。(法89条3の2号~10号)
就業規則の相対的必要記載事項 |
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必要記載事項の一部を欠く場合
- [0818] 必要記載事項の一部を欠く就業規則であっても、その効力発生についての他の要件(届出義務・意見の聴取・周知義務)を具備する限り有効であるが、このような就業規則を作成し届け出ても使用者の法89条(就業規則の作成及び届出義務)違反の責任は免れない。(平成11年3月31日基発168号)
始業及び終業の時刻
- [0819] 同一事業場において、労働者の勤務態様、職種等によって始業及び終業の時刻が異なる場合は、就業規則に勤務態様、職種等の別ごとに始業及び終業の時刻を規定しなければならない。(昭和63年3月14日基発150号、平成11年3月31日基発168号)
- [0820] 「始業及び終業の時刻」とは、当該事業場における所定労働時間の開始時刻と終了時刻とをいうものであり、これによって、所定労働時間の長さと位置を明確にしようとするものである。したがって、例えば労働時間については「1日8時間とする」というような規定だけでは要件を満たさないものである。(コンメンタール89条)
フレックスタイム制におけるコアタイム・フレキシブルタイム
- [0821] コアタイム(労働者が労働しなければならない時間帯)、フレキシブルタイム(労働者がその選択により労働することができる時間帯)も始業及び終業の時刻に関する事項であるので、それらを設ける場合には、就業規則においても規定しなければならない。(昭和63年1月1日基発1号、平成11年3月31日基発168号)
監視・断続的労働に従事する者
- [0822] 法41条3号に該当する者(監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの)についても法89条は適用されるのであるから、就業規則には「始業及び終業の時刻」を定めなければならない。(昭和23年12月25日基収4281号)
休暇
- [0823] 「休暇」には、本法上与えることを義務づけられている年次有給休暇、産前産後の休暇及び生理日の休暇のほか、育児・介護休業法に基づく育児休業及び介護休業、法37条3項の休暇(代替休暇)、任意に与えることとしている諸休暇(夏季、年末年始休暇、教育訓練休暇、慶弔休暇等)も含まれる。それらの制度を設けている場合には必ず就業規則で具体的に記載しなければならない(絶対的必要記載事項となる)。(コンメンタール89条)
- [0824] 「休暇」の中には、育児休暇も含むものとされ、育児・介護休業法による育児休業も、この育児休暇に含まれるものであり、育児休業の対象となる労働者の範囲等の付与要件、育児休業取得に必要な手続、休業期間については、就業規則に記載する必要がある。(平成3年12月20日基発712号、平成11年3月31日基発168号)
- [0825] 育児・介護休業法においては、育児休業の対象者、申出手続、育児休業期間等が具体的に定められているので、育児休業法の定めるところにより育児休業を与える旨の定めがあれば記載義務を満たしたこととなる。(平成3年12月20日基発712号、平成11年3月31日基発168号)
時間単位年休の実施
- [0826] 労使協定の締結によって時間単位年休を実施する場合には、「休暇」として時間単位年休に関する事項を就業規則に記載する必要がある。(平成21年5月29日基発0529001号)
退職
- [0827] 「退職」とは、解雇を含め労働契約が終了するすべての場合を指すと解すべきである。したがって、「退職に関する事項」とは、任意退職、解雇、定年制、契約期間の満了による退職等労働者がその身分を失うすべての場合に関する事項をいう。(コンメンタール89条)
退職手当
- [0828] 退職手当について「不支給事由又は減額事由」を設ける場合には、これは退職手当の決定及び計算の方法に関する事項に該当するので、就業規則に記載する必要がある。(昭和63年1月1日基発1号、平成11年3月31日基発168号)
旅費
- [0829] 旅費に関する事項は、就業規則の絶対的必要記載事項ではないから、就業規則中に旅費に関する定めをしなくても差し支えないが、旅費に関する一般的規定をつくる場合には相対的必要記載事項として就業規則の中に規定しなければならない。(昭和25年1月20日基収3751号、平成11年3月31日基発168号)
従来からの慣習
- [0830] 慣習等により労働条件の変更等につき労働組合との協議を必要とする場合において、その旨を就業規則に記載するか否かは当事者の自由である。(昭和23年10月30日基発1575号)
- [0831] 当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合においては、就業規則に記載しなければならない。この場合、たとえ、労働協約あるいは規定が存在しなくとも、従来の慣習が「当該事業場の労働者のすべてに適用される」ものである場合には、同様に就業規則に記載しなければならない。(平成11年3月31日基発168号)
就業規則の作成手続
意見の聴取
- [0832] 常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則の作成については、当該事業場に、過半数労働組合がある場合には当該労働組合(過半数労働組合がない場合においては過半数代表者)の「意見」を聴かなければならないが、同意を得る必要はない。(法90条1項)
- [0833] 使用者は、就業規則の一部のみを変更する場合においても、労働組合又は過半数代表者の意見を聴かなければならず、所轄労働基準監督署長に届け出なければならない。(法90条1項)
労働者の過半数を代表する者
- [0834] 就業規則の作成又は変更における「労働者の過半数を代表する者」とは、当該事業場の全部の労働者の過半数を超える者によって代表者とされた者をいう。(コンメンタール90条)
意見聴取の趣旨
- [0835] 法90条1項が、就業規則の作成又は変更について、当該事業場の過半数労働組合、それがない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴くことを使用者に義務づけた趣旨は、使用者が一方的に作成・変更しうる就業規則に労働者の団体的意思を反映させ、就業規則を「合理的なもの」にしようとすることにある。(コンメンタール90条)
意見を聴かなければならない
- [0836] 「労働組合の意見を聴かなければならない」というのは労働組合との協議決定を要求するものではなく、当該就業規則についての労働組合の「意見」を聴けば法違反とはならない趣旨である。(昭和25年3月15日基収525号)
別個の就業規則に対する意見聴取
- [0837] 一部の労働者に適用される就業規則も当該事業場の就業規則の一部分であるから、その作成又は変更に際しての法90条の意見の聴取については、当該事業場の全労働者の過半数で組織する労働組合又は全労働者の過半数を代表する者の意見を聴くことが必要である。(昭和23年8月3日基収2446号、昭和63年3月14日基発150号)
意見書の添付
- [0838] 2021改正就業規則の届出の際には、就業規則に係る意見を記した書面(意見書)を添付しなければならず、これは労働者を代表する者の氏名を記載したものでなければならない。(則49条2項)
2以上の事業場がある場合
- [0839] 一企業に2以上の事業場があり、労働組合は各事業場を通じて単一組織となっているが、各事業場には支部、分会等が置かれていない場合又は置かれていても当該支部、分会等が労働組合としての独立性をもたない場合には、使用者は、各事業場の労働者の過半数が当該労働組合に加入している限り、「当該労働組合」の意見を聴かなければならない。(コンメンタール90条)
- [0840] 次に、当該支部、分会等が労働組合としての独立性をもつ場合には、当該事業場の労働者の過半数が当該支部、分会等に加入している限り、「当該支部、分会等」の意見を聴けば足りることはもちろんであるが、さらに、この場合には、当該支部、分会等に代えて、当該労働組合自身に意見を聴くことも許される。(コンメンタール90条)
労働組合が故意に意見を表明しない場合等
- [0841] 2021改正 就業規則の作成、届出については、労働組合が故意に意見を表明しない場合又は意見書に氏名を記載しない場合でも、意見を聴いたことが客観的に証明できる限り、受理される。(昭和23年10月30日基発1575号)
過半数労働組合等でなくなった場合
- [0842] 就業規則の作成の際に意見を聴取した労働組合が、届出の後に当該事業場の過半数で組織する労働組合でなくなった場合には、改めて過半数で組織する労働組合の意見を聴取する必要はない。(コンメンタール36条)
就業規則の不利益変更
- [0843] 新たな就業規則の作成又は変更によって、既得の権利を奪い、労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは、原則として、許されないと解すべきであるが、労働条件の集合的処理、特にその統一的かつ画一的な決定を建前とする就業規則の性質からいって、当該規則条項が合理的なものであるかぎり、個々の労働者において、これに同意しないことを理由として、その適用を拒否することは許されないと解すべきであり、これに対する不服は、団体交渉等の正当な手続による改善にまつほかはないとするのが最高裁判所の判例である。(昭和43年12月25日最高裁判所大法廷秋北バス事件)
懲戒を行う場合
- [0844] 企業は、その存立を維持し目的たる事業の円滑な運営を図るため、企業秩序を定立し、この企業秩序のもとにその活動を行うものであって、企業は、その構成員に対してこれに服することを求めることができ、これに違反する行為をする者がある場合には、企業秩序を乱すものとして、制裁として懲戒処分を行うことができるが、使用者が労働者を懲戒するには、あらかじめ就業規則において懲戒の種別及び事由を定めておくことを要するとするのが最高裁判所の判例である。(昭和54年10月30日最高裁判所第三小法廷国鉄札幌運転区事件)
制裁規定の制限
減給の制裁の制限
- [0845] 制裁のなかでも減給の制裁については、それが労働の結果いったん発生した賃金債権を減額するものであることから、その額があまりに多額であると労働者の生活を脅かすおそれがある。法91条は、この従来の解釈例規の考え方を踏襲し、減給の最高限度を定めたものである。(コンメンタール91条)
制限の上限
- [0846] 事案1回の上限…1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えてはならない。(法91条)
- [0847] 一賃金支払期における上限…減給の総額が当該賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない。(法91条)
欠勤等があった場合
- [0848] 法91条は、一賃金支払期における賃金総額が欠勤、遅刻等により減額されたため僅少となった場合には、当該減給額が当該賃金支払期に対し「現実に支払われる賃金の総額」の10分の1を超えてはならない趣旨である。(昭和25年9月8日基収1338号)
上限を超える減給の制裁
- [0849] 「総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない」とは、一賃金支払期に発生した数事案に対する減給の総額が、当該賃金支払期における賃金の総額の10分の1以内でなければならないという意味であり、もし、これを超えて減給の制裁を行う必要が生じた場合には、その部分の減給は、次期の賃金支払期に延ばさなければならない。(昭和23年9月20日基収1789号)
「就業規則」の解釈
- [0850] 常時10人未満の労働者を使用する使用者は、就業規則作成の義務はないが、当該使用者において就業規則を作成したときは、それも労働基準法にいう「就業規則」として、法91条(制裁規定の制限)、法92条(法令及び労働協約との関係)及び法93条(労働契約との関係)の規定は適用がある。(コンメンタール91条)
- [0851] 法91条の「就業規則」とは、就業規則一般をいい、法89条の規定により就業規則を作成する義務がある常時10人以上の労働者を使用する使用者が作成する就業規則に限らない。法91条で「就業規則」という場合、これは法89条の規定によりその作成を義務づけられているものに限らない。(コンメンタール91条)
賞与からの減給の制裁
- [0852] 制裁として賞与から減額することが明らかな場合は、賞与も賃金であり、法91条の減給の制裁に該当する。したがって賞与から減額する場合も1回の事由については平均賃金の半額を超え、また、総額については、一賃金支払期における賃金、すなわち「賞与額」の10分の1を超えてはならないことになる。(昭和63年3月14日基発150号)
減給の制裁に該当しないもの
- [0853] 次のようなものは、減給の制裁に該当しない。
減給の制裁に該当しない場合 |
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法令及び労働協約との関係
就業規則と法令・労働協約との関係
- [0854] 就業規則は、法令又は当該事業場について適用される労働協約に反してはならない。(法92条1項)
「労働協約に反してはならない」の適用
- [0855] 当該事業場の従業員の一部しか労働組合に加入していない結果、労働協約の適用がその事業場の一部に限られている場合には、その適用を受ける労働者に関する限りにおいて労働協約と就業規則との関係が問題となるため、就業規則の内容が労働協約の内容に反する場合においても、その労働協約が適用されない労働者については就業規則の規定がそのまま適用されることとなる。(コンメンタール92条)
「労働協約に反してはならない」の意味
- [0856] 法92条における労働協約に「反してはならない」とは、「就業規則の内容が、労働協約のなかに定められた労働条件その他労働者の待遇に関する基準、すなわち、いわゆる労働協約の規範的部分に反してはならないという意味」であり、労働協約中の就業規則作成にあたっての手続たる「会社の社内諸規則、諸規定の制定改廃に関しては労働組合の同意を要するものとする」というような規定は、法92条には関係ない。(昭和24年1月7日基収4078号)
変更命令
- [0857] 行政官庁(所轄労働基準監督署長)は、法令又は労働協約に抵触する就業規則の変更を命ずることができる。(法92条2項、則50条)
変更の効力
- [0858] 行政官庁による変更命令は、就業規則を変更すべき義務を使用者に課するにとどまるものであるから、変更命令が出されても、それだけで就業規則が変更されたこととなるものではなく、使用者によって所要の変更手続がとられてはじめて変更されたことになる。(コンメンタール92条)
罰則の適用
- [0859] 行政官庁による変更命令が出されたにもかかわらず使用者がこれに従わなかったときは、法92条違反として30万円以下の罰金に処せられる。変更命令に基づき変更手続をとってもこれを届け出ないときは法89条違反として、30万円以下の罰金に処せられる(同じ程度の罰則である)。(法120条)
就業規則と労働契約との関係
- [0860] 就業規則に定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とされ、この場合において無効となった部分は、就業規則で定める基準によるとされている。(労働契約法12条)
最低基準効
- [0861] 就業規則には、就業規則への記載を義務づけている事項以外の事項(就業規則の制定趣旨ないし根本精神を宣言した規定、就業規則の解釈及び適用に関する規定、労働社会保険の適用等)も記載することができ、当該任意記載事項はその内容が合理的であり、かつ、労働者に周知されていれば、就業規則の労働契約に対する最低基準効が認められる。(労働契約法12条)
就業規則の法的性質
- [0862] 就業規則が労働者に対し、一定の事項につき使用者の業務命令に服従すべき旨を定めているときは、そのような就業規則の規定内容が「合理的なもの」であるかぎりにおいて当該具体的労働契約の内容をなしているものということができるとするのが最高裁判所の判例である。(昭和61年3月13日最高裁判所第一小法廷電電公社帯広局事件)
寄宿舎
寄宿舎生活の自治
私生活の自由
- [0863] 使用者は、事業の附属寄宿舎に寄宿する労働者の私生活の自由を侵してはならない。(法94条1項)
- [0864] 「私生活の自由を侵す行為」とは次の通りである。(事業附属寄宿舎規程4条)
私生活の自由を侵す行為 |
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管理人、寮母の設置
- [0865] 寄宿舎の管理人、寮母を置いても私生活の自由を侵さない限り法94条に抵触するものではない。(昭和22年9月13日発基17号)
寄宿舎生活の自治
- [0866] 使用者は、寮長、室長その他寄宿舎生活の自治に必要な役員の選任に干渉してはならない。(法94条2項)
- [0867] 法94条2項は役員の選任に関する一切の事項(役員の構成、員数、選出方法等について、使用者が寄宿労働者のために案を作成し、寄宿全労働者の自由な承認を求めること等を含む)に干渉してはならない趣旨である。(昭和23年5月1日基収1317号)
罰則の適用
- [0868] 法94条1項(使用者は、事業の付属寄宿舎に寄宿する労働者の私生活の自由を侵してはならない)の違反については罰則はない。なお、法94条2項(使用者は、寮長、室長その他寄宿舎生活の自治に必要な役員の選任に干渉してはならない)に違反して役員の選任に干渉した場合は、6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処せられる。(法119条)
寄宿舎規則
寄宿舎規則の作成及び届出
- [0869] 事業の附属寄宿舎に労働者を寄宿させる使用者は、次の事項について「寄宿舎規則」を作成し、所轄労働基準監督署長に届け出なければならない。これを変更した場合においても同様である。(法95条1項、事業附属寄宿舎規程1条の2第1項)
寄宿舎規則の記載事項 |
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寄宿労働者の過半数代表者の同意
- [0870] 使用者が、「寄宿舎規則」を作成する場合には、原則として、当該事業場に、寄宿労働者の過半数を代表する者の同意を得なければならない。(法95条2項)
- [0871] 寄宿舎規則の記載事項のうち、起床、就寝、外出及び外泊に関する事項、行事に関する事項、食事に関する事項、安全及び衛生に関する事項については、寄宿舎労働者の過半数を代表する者の同意を得なければならないが、建設物及び設備の管理に関する事項については、当該同意は不要である。(法95条2項)
- [0872] 使用者及び寄宿舎に寄宿する労働者は、寄宿舎規則を遵守しなければならない。(法95条4項)
- [0873] 2021改正同意を証明する書面は、寄宿舎に寄宿する労働者の過半数を代表する者の氏名を記載したものでなければならない。(事業附属寄宿舎規程1条の2第2項、建設寄宿舎規程2条3項)
寄宿舎の設備及び安全衛生
寄宿舎の設備及び安全衛生
- [0874] 使用者は、事業の附属寄宿舎について、換気、採光、照明、保温、防湿、清潔、避難、定員の収容、就寝に必要な措置その他労働者の健康、風紀及び生命の保持に必要な措置を講じなければならず、当該措置の基準は、厚生労働省令(事業附属寄宿舎規程、建設業附属寄宿舎規程)で定める。(法96条)
監督上の行政措置
附属寄宿舎の設置、移転等の計画の届出
- [0875] 使用者は、常時10人以上の労働者を就業させる事業、厚生労働省令で定める危険な事業又は衛生上有害な事業の附属寄宿舎を設置し、移転し、又は変更しようとする場合においては、厚生労働省令で定める危害防止等に関する基準に従い定めた計画を、工事着手14日前までに、所轄労働基準監督署長に届け出なければならない。(法96条の2第1項、事業附属寄宿舎規程3条の2、建設寄宿舎規程5条の2)
附属寄宿舎の設置、移転等の計画の届出 |
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附属寄宿舎が安全及び衛生の基準に反する場合
- [0876] 労働者を就業させる事業の附属寄宿舎が、安全及び衛生に関し定められた基準に反する場合においては、所轄労働基準監督署長は、使用者に対して、その全部又は一部の使用の停止、変更その他必要な事項を命ずることができる。(法96条の2第1項、事業附属寄宿舎規程3条の2、建設寄宿舎規程5条の2)
災害補償
災害補償
災害補償
災害補償
- [0877] 近代産業の興隆に伴い、労働災害も著しく増大したが、労働基準法では、使用者に対し無過失損害賠償理論に基づく補償を義務づけている。(コンメンタール第8章)
派遣労働者の場合
- [0878] 労働基準法第8章災害補償については、派遣元が責任を負う。(労働者派遣法44条、昭和61年6月6日基発333号、平成20年7月1日基発0701001号)
療養補償
- [0879] 労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかった場合においては、使用者は、その費用で必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を負担しなければならない。(法75条1項)
- [0880] 業務上の疾病及び療養の範囲は、厚生労働省令で定められる。(法75条2項)
- [0881] 労働者が就業中又は事業場若しくは事業の附属建設物内で負傷し、疾病にかかり又は死亡した場合には、使用者は、遅滞なく医師に診断させなければならない。(則37条)
休業補償
- [0882] 労働者が法75条の規定による療養のため、労働することができないために賃金を受けない場合においては、使用者は、労働者の療養中平均賃金の100分の60の「休業補償」を行わなければならない。(法76条1項)
障害補償
- [0883] 労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり、治った場合において、その身体に障害が存するときは、使用者は、その障害の程度に応じて、平均賃金に別表第2(第1級1,340日分~第14級50日分)に定める日数を乗じて得た金額の「障害補償」を行わなければならない。(法77条、別表第2)
休業補償及び障害補償の例外
- [0884] 労働者が「重大な過失」によって業務上負傷し、又は疾病にかかり、かつ使用者がその過失について所轄労働基準監督署長の認定を受けた場合においては、休業補償又は障害補償を行わなくてもよい。(法78条、則41条)
遺族補償
- [0885] 労働者が業務上死亡した場合においては、使用者は、遺族に対して、平均賃金の1,000日分の「遺族補償」を行わなければならない。(法79条)
葬祭料
- [0886] 労働者が業務上死亡した場合においては、使用者は、葬祭を行う者に対して、平均賃金の60日分の「葬祭料」を支払わなければならない。(法80条)
打切補償
- [0887] 法75条(療養補償)の規定によって補償を受ける労働者が、療養開始後3年を経過しても負傷又は疾病がなおらない場合においては、使用者は、平均賃金の1,200日分の打切補償を行い、その後は労働基準法の規定による補償を行わなくてもよい。(法81条)
分割補償
- [0888] 使用者は、支払能力のあることを証明し、補償を受けるべき者の同意を得た場合においては、法77条(障害補償)又は法79条(遺族補償)の規定による補償に替え、平均賃金に別表第3に定める日数を乗じて得た金額を、6年にわたり毎年補償することができる。(法82条)
補償を受ける権利
補償を受ける権利
- [0889] 補償を受ける権利は、労働者の「退職」によって変更されることはない。(法83条1項)
- [0890] 補償を受ける権利は、これを譲渡し、又は差し押えてはならない。(法83条2項)
他法との関係
他の法律との関係
- [0891] 法84条の規定に基づき、労働者災害補償保険法等により補償される場合は、労働基準法上の使用者の補償義務が免除される。(法84条1項)
- [0892] 使用者は、労働基準法による補償を行った場合においては、同一の事由については、その価額の限度において民法による損害賠償の責を免れる。(法84条2項)
請負事業に関する例外
請負事業に関する例外
- [0893] 建設業が数次の請負によって行われる場合においては、災害補償については、その元請負人を使用者とみなす。(法87条1項、則48条の2)
- [0894] この場合、元請負人が書面による契約で下請負人に補償を引き受けさせた場合においては、その下請負人もまた使用者とする。(法87条2項)
- [0895] また、元請負人が補償の請求を受けた場合においては、補償を引き受けた下請負人に対して、まず催告すべきことを請求することができるが、その下請負人が破産手続開始の決定を受け、又は行方が知れない場合においては、この限りでない。(法87条3項)
監督機関
監督機関
監督機関の職員等
監督機関の職員等
- [0896] 「厚生労働省」に労働基準主管局として労働基準局を、「各都道府県」に都道府県労働局を、また「各都道府県管内」に労働基準監督署を置くとともに、特別の権限を有する労働基準監督官に臨検監督その他の取締まりをさせている。 (法97条1項・2項)
労働基準監督官の権限等
労働基準監督官の権限等
- [0897] 労働基準監督官は、事業場、寄宿舎その他の附属建設物に臨検し、帳簿及び書類の提出を求め、又は使用者若しくは労働者に対して尋問を行うことができる。(法101条1項)
- [0898] 労働基準監督官は、その身分を証明する証票を携帯しなければならない。(法101条2項)
- [0899] 労働基準監督官は、労働基準法違反の罪について、刑事訴訟法に規定する司法警察官の職務を行う。(法102条)
- [0900] 労働者を就業させる事業の附属寄宿舎が、安全及び衛生に関して定められた基準に反し、かつ労働者に急迫した危険がある場合においては、労働基準監督官は、行政官庁の権限を即時に行うことができる。(法103条)
- [0901] 行政官庁は、労働基準法を施行するため必要があると認めるときは、使用者又は労働者に対し、必要な事項を報告させ、又は出頭を命ずることができる。(法104条の2第1項)
- [0902] 労働基準監督官は、労働基準法を施行するため必要があると認めるときは、使用者又は労働者に対し、必要な事項を報告させ、又は出頭を命ずることができる。(法104条の2第2項)
- [0903] 労働基準法及びこれに基づく命令に定める許可、認可、認定又は指定の申請書は、各々2通これを提出しなければならないこととされている。(則59条)
報告義務
- [0904] 使用者は、事業を開始した場合においては、遅滞なく、その事実を所轄労働基準監督署長に報告(適用事業報告)しなければならない。(則57条1項1号)
- [0905] 適用事業報告を怠った場合には、30万円以下の罰金に処せられる。(法120条)
監督機関に対する申告
監督機関に対する申告
- [0906] 事業場に、労働基準法又はこれに基づいて発する命令に違反する事実がある場合においては、労働者は、その事実を行政官庁又は労働基準監督官に申告することができる。(法104条1項)
- [0907] 使用者は、監督機関に対して申告をしたことを理由として、労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。(法104条2項)
- [0908] 監督機関に対して申告したことを理由として労働者を解雇し、その他不利益な取扱いをした使用者は、6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処せられる。(法119条1号)
雑則・罰則
雑則
法令等の周知義務
法令等の周知義務
- [0909] 使用者は、①労働基準法及び労働基準法に基づく命令の要旨、②就業規則、③労働基準法に基づく労使協定並びに④企画業務型裁量労働制及び高度プロフェッショナル制度に係る労使委員会の決議を、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること、書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によって、労働者に周知させなければならない。(法106条1項)
周知の方法
- [0910] 「厚生労働省令で定める方法」とは、次に掲げる方法である。(則52条の2)
周知の方法 |
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就業規則の効力
- [0911] 労働条件を定型的に定めた就業規則は、一種の社会的規範としての性質を有するだけでなく、それが合理的な労働条件を定めているものであるかぎり、経営主体と労働者との間の労働条件は、その就業規則によるという事実たる慣習が成立しているものとして、その法的規範性が認められるとするのが最高裁判所の判例である。(昭和43年12月25日最高裁判所大法廷秋北バス事件)
- [0912] 就業規則は、当該事業場内での社会的規範たるにとどまらず、法的規範としての性質が認められるものであるから、当該事業場の労働者は、就業規則の存在および内容を現実に知っていると否とにかかわらず、また、これに対して個別的に同意を与えたかどうかを問わず、当然に、その適用を受けるものというべきであるとするのが最高裁判所の判例である。(昭和43年12月25日最高裁判所大法廷秋北バス事件)
就業規則の周知義務
- [0913] 使用者が労働者を制裁として懲戒するためには、あらかじめ就業規則において懲戒の種別及び事由を定めておくことを要する。そして、就業規則が法的規範としての性質を有するものとして、拘束力を生ずるためには、その内容を適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続が取られていることを要するものとするのが最高裁判所の判例である。(平成15年10月10日最高裁判所第二小法廷フジ興産事件)
罰則の適用
- [0914] 就業規則等の周知義務を履行しない場合、30万円以下の罰金に処せられる。(法120条1号)
寄宿労働者への周知
- [0915] 使用者は、労働基準法及び労働基準法に基づく命令のうち①寄宿舎に関する規定、②寄宿舎規則を、寄宿舎の見易い場所に掲示し、又は備え付ける等の方法によって、寄宿労働者に周知させなければならない。(法106条2項)
労働者名簿
労働者名簿の調製
- [0916] 使用者は、各事業場ごとに「労働者名簿」を各労働者(日日雇い入れられる者を除く)について調製し、労働者の氏名、生年月日、履歴その他命令で定める事項を記入しなければならない。(法107条1項)
- [0917] 記入すべき事項に変更があった場合においては、遅滞なく訂正しなければならない。(法107条2項)
労働者名簿の記載事項
- [0918] 労働者名簿には、次の事項を記入しなければならない。(則53条1項)
労働者名簿の記載事項 |
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- [0919] 常時30人未満の労働者を使用する事業においては、「従事する業務の種類」を記入することを要しない。(則53条2項)
労働者名簿の形式
- [0920] 労働者名簿は、原則として、様式19号により調製しなければならないが、記載内容が則53条を満足する場合は、同様式と異なる様式によっても差し支えない。(則59条の2第1項)
罰則の適用
- [0921] 使用者が、労働者名簿の調製を怠った場合、30万円以下の罰金に処せられる。(法120条1号)
賃金台帳
賃金台帳の調製
- [0922] 使用者は、各事業場ごとに「賃金台帳」を調製し、賃金計算の基礎となる事項及び賃金の額その他厚生労働省令で定める事項を賃金支払の都度、遅滞なく記入しなければならない。(法108条)
賃金台帳の記載事項
- [0923] 賃金台帳には、次の事項を記入しなければならない。(則54条1項)
賃金台帳の記載事項 |
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- [0924] 賃金台帳において、賃金計算期間は、日日雇い入れられる者(1か月を超えて引続き使用される者を除く)については、記入することを要しない。(則54条4項)
- [0925] 賃金台帳において、労働時間数、時間外労働時間数及び休日労働時間数は、法41条該当者及び高度プロフェッショナル制度により労働させる労働者については、記入することを要しない。(則54条5項、昭和23年2月3日基発161号)
- [0926] 賃金台帳に係る時間外労働時間数、休日労働時間数及び深夜労働時間数は、当該事業場の就業規則において本法の規定と異なる所定労働時間又は休日の定めをした場合には、その就業規則に基づいて算定する労働時間数をもってこれに代えることができる。(則54条2項)
さかのぼり昇給があった場合
- [0927] 例えば、労働組合が4月に賃金の増額を要求し8月に賃金増額の協定が成立し、要求を提出した4月にさかのぼって支給することを約定した場合、旧賃金との差額が8月において一括支払われた場合の賃金台帳の記入方法については、過去4か月分の賃金であることを明記して、8月分の台帳の賃金の種類による該当欄に記入する。(昭和22年11月5日基発233号)
合併調製
- [0928] 使用者は、年次有給休暇管理簿、労働者名簿又は賃金台帳をあわせて調製することができる。(則55条の2)
記録の保存
記録の保存
- [0929] 2020改正使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を5年間(当分の間、3年間)保存しなければならない。(附則143条1項)
- [0930] 各法律の記録の保存をまとめると次の通りである。
労働基準法 | 5年(当分の間3年) |
労働安全衛生法 | 3年(5年、7年、30年、40年) |
労働者災害補償保険法 | 3年 |
雇用保険法 | 2年(被保険者4年) |
労働保険徴収法 | 3年(被保険者4年) |
健康保険法 | 2年 |
厚生年金保険法 | 2年 |
社会保険労務士法 | 2年 |
その他労働関係に関する重要な書類
- [0931] 法109条にいう「その他労働関係に関する重要な書類」には、出勤簿、タイムカード等の記録、労働基準法の規定に基づく労使協定の協定書、各種許認可書及び始業・終業時刻など労働時間に関する書類(使用者が自ら始業・始業・終業時刻を記録したもの、残業命令書及びその報告書並びに労働者が自ら労働時間を記録した報告書)などが該当する。(平成29年1月20日基発0120第3号)
保存すべき期間の起算日
- [0932] 2020改正保存すべき期間の起算日は次の通りである。(則56条)
保存すべき期間の起算日 |
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無料証明
無料証明
- [0933] 労働者及び労働者になろうとする者は、その戸籍に関して戸籍事務を掌る者又はその代理者に対して、無料で証明を請求することができる。使用者が、労働者及び労働者になろうとする者の戸籍に関して証明を請求する場合においても同様である。(法111条)
付加金の支払
付加金の支払
- [0934] 裁判所は、一定の賃金を支払わなかった使用者に対して、労働者の請求により、これらの規定により使用者が支払わなければならない金額についての「未払金」のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができる。(法114条)
- [0935] 付加金を請求し得る場合として定められているものは、次の通りである。(法114条)
付加金を請求し得る場合 |
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付加金の請求
- [0936] 2020改正付加金に係る労働者の請求は、違反のあったときから5年(当分の間、3年)以内にしなければならない。(附則143条2項)
- [0937] 付加金の支払義務は、使用者が予告手当等を支払わない場合に当然発生するものではなく、労働者の請求により裁判所がその支払を命ずることによって初めて発生するものと解すべきであるから、使用者に法20条の違反があっても、既に予告手当に相当する金額の支払を完了し使用者の義務違反が消滅した後においては、労働者は付加金の請求の申立てをすることができないものとするのが最高裁判所の判例である。(昭和35年3月11日最高裁判所第二小法廷細谷服装事件)
時効
時効
- [0938] 2020改正当分の間は、労働基準法の規定による退職手当の請求権はこれを行使することができる時から5年間、労働基準法の規定による賃金(退職手当を除く)の請求権はこれを行使することができる時から3年間、労働基準法の規定による災害補償その他の請求権(賃金の請求権を除く)はこれを行使することができる時から2年間行わない場合においては、時効によって消滅する。(附則143条3項)
- [0939] 退職時の証明については、請求権の時効は退職時から2年とされる。(平成11年3月31日基発169号)
罰則
罰則
労働基準法の罰則
- [0940] 労働基準法の罰則は、刑法9条にいう「刑」であることはいうまでもなく、したがって、犯罪の成立について刑法の一般原則によると同時に、科刑に当たっても刑法の一般原則が適用される。(コンメンタール第13章)
- [0941] 労働基準法は、労働条件の最低基準を定めたものであるが、この最低基準を確保するために、取締法規として罰則を定める。
- [0948] 労働基準法における主な罰則の規定は次の通りである。
1年以上10年以下の懲役又は20万円以上300万円以下の罰金(法117条) |
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1年以下の懲役又は50万円以下の罰金(法118条1項) |
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6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金(法119条) |
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30万円以下の罰金(法120条) |
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rks5701B中間搾取の規定に違反した者は、懲役刑を科されることがある。
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◯(正しい)
行為者処罰主義
- [0942] 原則として、労働基準法は、行為者処罰主義(現実の行為者を使用者として把握し本法の責任の主体とする)を採用する。(コンメンタール第13章)
両罰規定
- [0943] 労働基準法は、「行為者処罰主義」が原則であるが、違反行為をした者が、事業主のために行為した代理人、使用人その他の従業者(法人の代表者や代表権のない取締役などを含む)である場合においては、事業主(個人事業主又は法人そのもの)に対しても罰金刑を科する「両罰規定」を設けている。(法121条1項)
両罰規定の例外
- [0944] 事業主(個人事業主又は法人の代表者)が違反の防止に必要な措置をした場合においては、事業主に対して両罰規定は適用されない。(法121条1項)
行為者として罰する
- [0945] 事業主(個人事業主又は法人の代表者)が、①違反の計画を知り、その防止に必要な措置を講じなかった場合、②違反行為を知り、その是正に必要な措置を講じなかった場合、③違反を教唆した場合においては、当該事業主も行為者として罰するため、罰金刑のみならず、懲役刑を科せられることもある。(法121条2項)
事務代理の委任を受けた社会保険労務士の場合
- [0946] 労働基準法及び労働基準法に基づく命令の規定により事業主に申請等が義務づけられている場合において、当該申請等について事務代理の委任を受けた社会保険労務士がその懈怠により当該申請等を行わなかった場合には、その社会保険労務士は、「使用者」及び「代理人、使用人その他の従業者」に該当するものであるので、その社会保険労務士を、当該申請等の義務違反の行為者として、労働基準法の罰則規定に基づきその責任が問われる。(昭和62年3月26日基発169号)