妊産婦等
妊産婦等の就業制限
就業制限業務
用語の定義
- [0768] 「妊娠中の女性」とは、いわゆる妊婦のことをいう。(女性則2条1項、コンメンタール64条の3)
- [0769]「産後1年を経過しない女性」とは、いわゆる産婦のことをいう。(女性則2条2項、コンメンタール64条の3)
- [0770] 「妊産婦」とは、妊娠中の女性及び産後1年を経過しない女性のことをいう。(法64条の3)
女性の坑内労働
- [0771] 使用者は、次の女性については、それぞれに掲げる坑内業務に就かせることができない。(法64条の2、平成18年10月11日基発1011001号、雇児発1011001号)
女性の坑内労働 |
---|
|
危険有害業務の就業制限
- [0772] 使用者は、妊娠中の女性及び産後1年を経過しない女性(妊産婦)を、重量物を取り扱う業務、有害ガスを発散する場所における業務その他妊産婦の妊娠、出産、哺育等に有害な業務に就かせてはならない。(法64条の3第1項)
- [0773] 女性労働者に対する就業制限をまとめると、次の通りである。
女性 | 危険有害業務の就業制限 |
---|---|
妊娠中の女性(妊婦) (女性則2条1項) |
|
産後1年を経過しない女性(産婦) (女性則2条2項) |
|
妊産婦以外の女性 (女性則3条) |
|
他の軽易な業務への転換
- [0774] 使用者は、「妊娠中の女性」が「請求」した場合においては、他の軽易な業務に「転換」させなければならない。(法65条3項)
軽易な業務の創設
- [0775] 法65条3項は原則として女性が請求した業務に転換させる趣旨であるが、新たに軽易な業務を創設して与える義務まで課したものではない。(昭和61年3月20日基発151号)
時間外労働等の制限との関係
- [0776] 妊娠中の女性は、法65条3項に基づく軽易な業務への転換の請求及び法66条に基づく法定の時間外労働、休日労働及び深夜業をさせないことの請求のいずれか一方又は双方を同時に行うことができる。(昭和61年3月20日基発151号)
派遣労働者の場合
- [0777] 妊娠中の派遣労働者が、他の軽易な業務への転換の請求を行う場合は、派遣元の事業主に対して行わなければならない。(労働者派遣法44条)
産前産後に関する規制
産前の規制
- [0778] 使用者は、6週間(多胎妊娠の場合にあっては、14週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない。(法65条1項)
産後の規制
- [0779] 使用者は、原則として、産後8週間を経過しない女性を就業させてはならない。(法65条2項)
- [0780] 使用者は、産後6週間を経過しない女性について、当該女性が就業を請求した場合であっても、その者を就業させてはならない。
- [0781] 産後6週間を経過した女性が就業を請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることはできる。
予定日を遅れての分娩
- [0782] 6週間内に予定された分娩予定日よりも遅れて出産した場合に、予定日から出産当日までの期間は、産前の休業期間に含まれる。(昭和25年3月31日基収4057号)
出産の定義
- [0783] 産前産後休業に係る「出産」とは妊娠4か月以上(1か月は28日として計算する。したがって、4か月以上というのは、85日以上のことである)の分娩とし、生産のみならず早産、流産、死産をも含むものとする。(昭和23年12月23日基発1885号)
法41条該当者の場合
- [0784] 法41条に該当する者であっても、「産前産後休業」及び「軽易な業務への転換(請求した妊娠中の女性の場合)」の規定は適用される。(法41条)
出勤率の算定
- [0785] 出勤率が90%以上であることを賞与の支給要件とする出勤率の算定に当たり、産前産後休業等を出勤日数に含めない取扱いについて、「労働基準法65条等の趣旨に照らすと、これにより産前産後休業を取る権利等の行使を抑制し、ひいては労働基準法等が上記権利等を保障した趣旨を実質的に失わせるものと認められる場合に限り、公序に反するものとして無効となる」とするのが最高裁判所の判例である。(平成15年12月4日最高裁判所第一小法廷東朋学園事件)
妊産婦等の労働条件
妊産婦等の労働時間、休日労働、深夜業に関する制限
変形労働時間制の制限
- [0786] 妊産婦が請求した場合は、1箇月単位の変形労働時間制、1年単位の変形労働時間制、1週間単位の非定型的変形労働時間制の規定にかかわらず、「法定労働時間」を超えて労働させてはならない。(法66条1項)
時間外労働・休日労働の禁止
- [0787] 妊産婦が請求した場合は、法33条(災害等のための臨時の必要及び公務のための臨時の必要)及び法36条(36協定)の規定にかかわらず、時間外労働及び休日労働をさせてはならない。(法66条2項)
法41条該当者の場合
- [0788] 妊産婦のうち、法41条に該当する者については、労働時間、休憩、休日に関する規定が適用されないため、「変形労働時間制の制限」及び「時間外労働・休日労働の禁止」の規定の適用はない。(昭和61年3月20日基発151号)
深夜業の禁止
- [0789] 使用者は、妊産婦が請求した場合においては、深夜業をさせてはならない。(法66条3項)
法41条該当者の場合
- [0790] 法41条該当者であっても、深夜業の規定は適用されるため、法41条該当者たる妊産婦が請求した場合には、深夜業をさせてはならない。(昭和61年3月20日基発151号)
育児時間
育児時間
- [0791] 生後満1年に達しない生児を育てる女性は、法34条の休憩時間のほか、1日2回各々少なくとも30分、その生児を育てるための時間を請求することができる。(法67条1項)
1日の労働時間が4時間以内の場合
- [0792] 法67条は、1日の労働時間を8時間とする通常の勤務態様を予想し、その間に1日2回の育児時間の附与を義務づけるものであって、1日の労働時間が4時間以内であるような場合には、1日「1回」の育児時間の附与をもって足りる。(昭和36年1月9日基収8996号)
育児時間を与える時間
- [0793] 育児時間をいつ与えるかは定めてはおらず、当事者間にまかせられている。(昭和33年6月25日基収4317号)
育児時間と育児介護休業法に規定する労働時間の短縮との関係
- [0794] 育児時間は、1歳未満の子を育てている女性労働者が請求した場合、授乳に要する時間を通常の休憩時間とは別に確保すること等のために設けられたものであり、「育児時間」と「育児・介護休業法に規定する所定労働時間の短縮措置」は、その趣旨及び目的が異なることから、それぞれ別に措置しなければならない。(平成27年3月31日雇児発0331第27号)
派遣労働者の場合
- [0795] 派遣中の派遣労働者が、育児時間を請求する場合は、派遣元事業主に対してではなく、派遣先の事業主に対して行わなければならない。(労働者派遣法44条)
生理休暇
生理休暇
- [0796] 使用者は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならない。(法68条)
付与単位
- [0797] 生理休暇の請求は、就業が著しく困難である事実に基づき行われるものであることから、必ずしも「暦日」単位で行われなければならないものではなく、半日又は時間単位で請求した場合には、使用者はその範囲で就業させなければ足りる。(昭和61年3月20日基発151号)
生理休暇の日数
- [0798] 生理期間、その間の苦痛の程度あるいは就労の難易は各人によって異なるものであり客観的な一般基準は定められない。したがって就業規則その他によりその「日数を限定」することは許されない。(昭和63年3月14日基発150)
生理休暇の挙証責任
- [0799] 原則として特別の証明がなくても女性労働者の請求があった場合には、生理休暇を与えることにし、特に証明を求める必要が認められる場合であっても、医師の診断書のような厳格な証明を求めることなく、一応事実を推断せしめるに足れば充分であるから、例えば同僚の証言程度の簡単な証明で足りる。(昭和63年3月14日基発150号)
休暇中の賃金
- [0800] 生理休暇中の「賃金」については、労働契約、労働協約又は就業規則で定めるところにより、支給しても、しなくても差支えない。(昭和63年3月14日基発150号)
技能習得者
技能習得者
徒弟の弊害排除
徒弟の弊害排除
- [0801] 使用者は、徒弟、見習、養成工その他名称のいかんを問わず、技能の習得を目的とする者であることを理由として、労働者を酷使してはならない。(法69条1項)
- [802] 使用者は、技能の習得を目的とする労働者を家事その他技能の習得に関係のない作業に従事させてはならない。(法69条2項)
職業訓練に関する特例
訓練生の特例
認定職業訓練生の特例
- [0803] 職業能力開発促進法の規定による「都道府県知事」の認定を受けて行う職業訓練を受ける労働者については、「認定職業訓練生の特例」が適用される。(法70条)
認定職業訓練生の特例 | 内容 |
---|---|
契約期間 (則34条の2の2) | 訓練期間の範囲内であれば、3年を超える労働契約を定めることができる |
危険有害業務の就業制限 (則34条の3) | 技能を習得させるために必要がある場合において、年少者である訓練生を危険有害業務に就かせることができる |
年少者の坑内労働の禁止 (則34条の3) | 満16歳以上の男性である訓練生に限り、使用者は、技能を習得させるために必要があるときには、その必要の限度で、当該訓練生を坑内労働に就かせることができる |
- [0804] ただし、当該労働者を使用することについて、使用者は「所轄都道府県労働局長」の許可を受けなければならない。(法71条、則34条の4)
未成年訓練生の年次有給休暇
- [0805] 未成年訓練生の年次有給休暇付与日数は、次の通りである。(法72条)
勤続年数 | 0.5年 | 1.5年 | 2.5年 | 3.5年 | 4.5年 | 5.5年以上 |
付与日数 | 12日 | 13日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |