労働基準法の全論点集(18)
年少者
年少者の労働契約
最低年齢
最低年齢の原則
- [0741] 使用者は、児童が満15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了するまで、これを使用してはならない。(法56条1項)
最低年齢の例外
満13歳以上の児童の場合
- [0742] 満13歳以上の児童については、①非工業的業種及び農林水産業に係る職業で、②児童の健康及び福祉に有害でなく、かつ、その労働が軽易なものについては、③所轄労働基準監督署長の許可を受けて、④その者の修学時間外に使用することができる。(法56条2項、年少則1条)
非工業的業種
- [0743] 非工業的業種であっても、①公衆の娯楽を目的として曲馬又は軽業を行う業務、②戸々について、又は道路その他これに準ずる場所において、歌謡、遊芸その他の演技を行う業務、③旅館、料理店、飲食店又は娯楽場における業務、④エレベーターの運転の業務、⑤その他厚生労働大臣が別に定める業務については、所轄労働基準監督署長の児童使用の許可が与えられない。(年少則9条)
満13歳未満の場合
- [0744] 満13歳未満の児童については、①映画の製作又は演劇の事業で、②児童の健康及び福祉に有害でなく、かつ、その労働が軽易なものについては、③所轄労働基準監督署長の許可を受けて、④その者の修学時間外に使用することができる。(法56条2項、年少則1条)
年少者の証明書
年少者の証明書
- [0745] 年少者(満18歳に満たない者)について事業場に備え付けるべきものは次の通りである。(法57条1項・2項)
児童 |
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- 年齢を証明する戸籍証明書
- 修学に差し支えないことを証明する学校長の証明書
- 親権者又は後見人の同意書
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年少者の帰郷旅費
年少者の帰郷旅費
- [0746] 年少者(満18歳に満たない者)が解雇の日から「14日以内に帰郷」する場合においては、使用者は、原則として、必要な旅費を負担しなければならない。(法64条)
その責に帰すべき事由に基づいて解雇された場合
- [0747] 年少者(満18歳に満たない者)が、その責めに帰すべき事由に基づいて解雇され、使用者がその事由について所轄労働基準監督署長の認定を受けたときは、帰郷に必要な旅費を負担する必要はない。(法64条ただし書、年少則10条1項)
所轄労働基準監督署長の認定の省略
- [0748] 年少者(満18歳に満たない者)がその責に帰すべき事由に基づいて解雇された場合であって、使用者が当該事由について所轄労働基準監督署長から解雇予告の除外認定を受けたときには、使用者は、当該労働者の法64条に係る帰郷旅費を負担しなくてよいことになり、この場合、あらためて当該年少者について帰郷旅費支給除外の認定を受ける必要はない。(年少則10条2項)
未成年者の労働契約
未成年者の労働契約
- [0749] 親権者又は後見人は、未成年者に代わって労働契約を締結してはならない。(法58条1項)
未成年者の労働契約の解除
- [0750] 親権者若しくは後見人又は所轄労働基準監督署長は、労働契約が未成年者に不利であると認める場合においては、将来に向かってこれを解除することができる。(法58条2項)
未成年者の賃金請求権
未成年者の賃金請求権
- [0751] 未成年者は、独立して賃金を請求することができる。親権者又は後見人は、未成年者の賃金を代わって受け取ってはならない。(法59条)
罰則の適用
- [0752] 「親権者等」が、未成年者の賃金を代わって受け取った場合には、法59条(未成年者の賃金請求権)違反として罰則が科せられ、この場合、親権者等に未成年者の「賃金を支払った使用者」は、法24条(賃金の直接払)違反となる。(法119条1号、法120条1号)
年少者の労働条件
年少者の労働時間、休憩、休日に関する制限
年少者には適用されない規定
- [0753] 次の規定は、年少者(満18歳に満たない者)には適用されない。(法60条1項)
年少者には適用されない規定 |
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- 変形労働時間制(法32条の2(1箇月単位の変形労働時間制)、法32条の3(フレックスタイム制)、法32条の4(1年単位の変形労働時間制)、法32条の5(1週間単位の非定型的変形労働時間制))
- 36協定による時間外・休日労働(法36条)
- 法定労働時間の特例(週44時間の特例)(法40条)
- 休憩の特例(休憩付与の適用除外、一斉付与の例外、自由利用の例外)(法40条)
- 高度プロフェッショナル制度(法41条の2)
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年少者にも適用される規定
- [0754] 次の規定は、年少者(満18歳に満たない者)についても適用される。(コンメンタール60条)
年少者にも適用される規定 |
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- 災害等又は公務のために臨時の必要がある場合の時間外・休日労働(平成11年3月31日基発168号)
- 労働時間等に関する規定の適用除外(法41条)
- 変形休日制(4週4休日制)
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年少者の変形労働時間制の特例
- [0755] 年少者(満15歳年度末までの間にある者を除く)については、次の変形労働時間制の特例が認められている。(法60条、則34条の2の4)
年少者(満15歳年度末までの間にある者を除く)についての変形労働時間制の特例 |
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- 1週間の労働時間が40時間を超えない範囲内において、1週間のうち1日の労働時間を4時間以内に短縮する場合において、他の日の労働時間を10時間まで延長すること。
- 1週間について48時間、1日について8時間を超えない範囲内において、1箇月単位の変形労働時間制又は1年単位の変形労働時間制の規定の例により労働させること。
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児童の労働時間に関する制限
児童の法定労働時間
- [0756] 児童を使用する場合においての法定労働時間は、休憩時間を除き、修学時間を通算して1週間について40時間、修学時間を通算して1日について7時間とする。(法60条2項)
年少者の深夜業に関する制限
年少者の深夜業(原則)
- [0757] 使用者は、年少者(満18歳に満たない者)を午後10時から午前5時までの間において使用してはならない。(法61条1項)
厚生労働大臣による時刻の変更
- [0758] 使用者は、原則として、満18歳に満たない者を午後10時から午前5時までの間において使用してはならないが、厚生労働大臣は、必要であると認める場合においては、地域又は期間を限って、その時間帯を午後11時から午前6時までとすることができる。(法61条2項)
満16歳以上の男性の場合
- [0759] 満18歳に満たない者でも、満16歳以上の男性については、交替制によって使用する場合は深夜に労働させることができる。(法61条1項ただし書)
交替制によって労働させる事業の場合
- [0760] 「交替制によって労働させる事業」については、所轄労働基準監督署長の許可を受けて、午後10時30分まで労働させ、又は午前5時30分から労働させることができる。(法61条3項、年少則5条)
災害等のために臨時の必要がある場合
- [0761] 災害等のために臨時の必要がある場合に所轄労働基準監督署長の許可を受けたときは、年少者(満18歳に満たない者)であっても、深夜業が認められる。 (法61条4項)
農林業、畜産・水産業、保健衛生業、電話交換の業務の場合
- [0762] ①農林業、畜産・水産業、②保健衛生業及び③電話交換の業務に従事させる場合には、年少者(18歳に満たない者)の深夜業が認められている。(法61条4項)
児童の深夜業に関する制限
児童の深夜業に関する制限
- [0763] 使用者は、児童について、午後8時から午前5時(厚生労働大臣が必要であると認める場合においては、地域又は期間を限って、午後9時から午前6時)までの間は使用してはならない。(法61条5項)
演劇子役の特例
- [0764] 使用者は、演劇の事業に使用される児童(いわゆる子役)が、演技を行う事業に従事する場合、午後9時まで使用することができる(深夜業の時間帯を午後9時から午前6時までとする)。(平成16年11月22日厚労告407号)
年少者の就業制限
坑内労働の禁止
年少者の坑内労働の禁止
- [0765] 使用者は、年少者(満18歳に満たない者)を「坑内」で労働させてはならない。(法63条)
危険有害業務の就業制限
年少者の危険有害業務の就業制限
- [0766] 一定の危険有害業務については、年少者(満18歳に満たない者)の就業は制限されている。(法62条)
- [0767] その範囲等は、主に「年少者労働基準規則(年少則)」で定められている。(法62条3項、年少則8条)