労働基準法の全論点集(12)

 

労働時間・休憩・休日(4)

休憩

休憩時間

休憩時間の定義

  • [0499] 「休憩時間」とは単に作業に従事しない手待時間を含まず労働者が権利として労働から離れることを保障されている時間をいう。(昭和22年9月13日発基17号)

休憩の付与

  • [0500] 使用者は、労働時間6時間を超える場合においては少なくとも45分8時間を超える場合においては少なくとも1時間休憩時間を与えなければならない。(法34条1項)
  • [0501] 休憩の規定への違反に対しては、罰則6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金)が設けられている。(法119条1号)
  • [0502] 1日の休憩時間に「最長限度についての定めはないが、長すぎる休憩は労働者をいたずらに長時間事業場に拘束することになり、望ましいことではない。(コンメンタール34条)

休憩付与の適用除外

  • [0503] 次のいずれかに該当する者については、休憩時間を与えないことができる。(則32条1項)
休憩付与の適用除外
  1.  運輸交通業又は郵便若しくは信書便の事業に使用される労働者のうち、列車気動車電車自動車船舶又は航空機乗務員で長距離にわたり継続して乗務するもの
  2.  1.に該当しない乗務員で、業務の性質上、休憩時間を与えることができないと認められる場合において、車時間等が休憩時間に相当するもの
  3.  屋内勤務者30人未満日本郵便株式会社の営業所(郵便窓口業務を行うものに限る)において郵便の業務に従事する者
  • [0504] 「長距離にわたり継続して乗務する」とは、運行の所要時間6時間」を超える区間について連続して乗務して勤務する場合をいう。(昭和29年6月29日基発355号)
  • [0505] 法41条該当者及び高度プロフェッショナル制度の対象労働者には、休憩の規定は適用しない。(法41条、法41条の2第1項)

休憩付与の3原則

  • [0506] 途中付与の原則、一斉付与の原則、自由利用の原則を「休憩付与の3原則」という。

途中付与の原則

  • [0507] 使用者は、休憩時間を労働時間の途中」に与えなければならない。(法34条1項)

一斉付与の原則

  • [0508] 休憩時間は、事業場の労働者に「一斉」与えなければならない。(法34条2項)

一斉付与の例外①(労使協定がある場合)

  • [0509] 労使協定がある場合には、休憩を一斉に与えなくてもよい。(法34条2項ただし書)
  • [0510] 労使協定をする場合には、一斉に休憩を与えない労働者の範囲及び当該労働者に対する休憩の与え方について、協定しなければならない。(則15条1項)
  • [0511] 行政官庁への届出は不要である。(法34条2項ただし書)

一斉付与の例外②(公衆を直接相手とする一定の業態の事業の場合)

  • [0512] 次の業種に該当する場合には、休憩一斉に与えなくてもよい。(則31条)
一斉付与の例外②
  1.  運輸交通業
  2.  商業
  3.  金融広告業
  4.  映画演劇業
  5.  通信業
  6.  保健衛生業
  7.  接客娯楽業
  8.  官公署

派遣労働者の場合

  • [0513] 休憩時間を一斉に与える義務派遣先使用者が負うこととされており、派遣先使用者は、当該事業場の自己の労働者と派遣中の労働者とを含めて、全体に対して一斉に休憩を与えなければならない。(平成11年3月31日基発168号)

自由利用の原則

  • [0514] 使用者は、原則として、休憩時間自由に利用させなければならない。(法34条3項)

自由利用の例外

  • [0515] 次のいずれかに該当する場合には、自由に利用させなくてもよい。(則33条)
自由利用の例外
  1.  警察官消防吏員、常勤の消防団員、准救急隊員及び児童自立支援施設に勤務する職員で児童と起居をともにする者
  2.  乳児院児童養護施設及び障害児入所施設に勤務する職員で児童と起居をともにする者予め所轄労働基準監督署長の許可を受けなければならない
  3.  児童福祉法に規定する居宅訪問型保育事業に使用される労働者のうち、家庭的保育者として保育を行う者(一定の場合を除く)

自由利用の制限

  • [0516] 休憩時間の利用について事業場の規律保持上必要な制限を加えることは、休憩の目的を害さない限り差支えない。(昭和22年9月13日発基17号)
  • [0517] 休憩時間の自由利用は、時間を自由に利用することが認められたものにすぎず、その時間の自由な利用が企業施設内において行われる場合には、使用者の企業施設に対する管理権の合理的な行使として是認される範囲内の適法な規制による制約を免れることはできないため、企業施設内において演説集会貼紙掲示ビラ配布等を行うことは、休憩時間中であっても、施設の管理を妨げるおそれがあり、更に、他の職員の休憩時間の自由利用を妨げ、ひいてはその後の作業能率を低下させるおそれがあって、その内容いかんによっては企業の運営に支障をきたし企業秩序を乱すおそれがあるのであるから、これを施設管理者の許可にかからせることは、合理的な制約ということができるとするのが最高裁判所の判例である。(昭和52年12月13日最高裁判所第三小法廷目黒電報電話局事件)

休憩時間中の外出

  • [0518] 休憩時間中の外出について所属長の許可を受けさせることは、事業場内において自由に休息し得る場合には必ずしも違法にはならない。(昭和23年10月30日基発1575号)

休日

休日

休日の定義

  • [0519] 「休日」とは暦日を指し、午前零時から午後12時までの休業と解される。(昭和23年4月5日基発535号)

休日の付与

  • [0520] 使用者は、労働者に対して、毎週少なくとも1回の休日か、4週間を通じ4回以上の休日を与えなければならない。(法35条)

休日の付与方法

  • [0521] 休日の与え方について、休憩時間のように一斉に与えることは、法律上要求されてはいない。また、必ずしも休日を特定する必要はないが、労働者保護の観点からすれば、休日の特定が望ましいことはいうまでもない。(コンメンタール35条)

一昼夜交替勤務の場合

  • [0522] 一昼夜交替勤務の場合、非番の継続24時間は休日とは認められず、原則通り、暦日午前0時より継続した24時間で与えなければならない。(昭和23年11月9日基収2968号)

8時間3交替制の場合

  • [0523] ①番方編成による交替制によることが就業規則等により定められており、制度として運用されていること、及び②各番方の交替が規則的に定められているものであって、勤務割表等によりその都度設定されるものではないことの要件を満たす「8時間3交替制」勤務の事業場においては、休日継続24時間で差し支えない。(昭和63年3月14日基発150号)

休日の出張

  • [0524] 所定の休日を旅行日とする出張を命じても、旅行中における物品の監視等別段の指示がある場合の外は休日労働として取扱わなくても差し支えない。(昭和33年2月13日基発90号)

国民の休日

  • [0525] 国民の祝日に関する法律は、国民の祝日に休ませることを強制的に義務づけをするのでなく、労働基準法は、毎週1回又は4週4日以上の休日を与えることを義務づけているが、この要件を満たすかぎり、国民の祝日に休ませなくても労働基準法違反とはならない。(昭和41年7月14日基発739号)

変形休日制

  • [0526] 変形休日制においては、特定の4週間に4日の休日があればよく、どの4週間を区切っても4日の休日が与えられていなければならないわけではない。(昭和23年9月20日基発1384号)
  • [0527] 変形休日制を採用する場合には、就業規則その他これに準ずるものにおいて、4週間の起算日を明らかにしなければならない。(則12条の2第2項)

休日の振替

休日の振替

  • [0528] 休日の振替」とは、あらかじめ休日と定められた日を労働日とし、その代わりに他の労働日を休日とすることである。(コンメンタール35条)
  • [0529] 休日の振替を行う場合には、次の要件を満たさなければならない。(昭和23年4月19日基収1397号、昭和63年3月14日基発150号)
休日の振替の要件
  1.  就業規則等において、休日を振り替えることができる旨の規定を設けること
  2.  あらかじめ振り替えるべき日を特定すること
  3.  法定休日4週4日の休日が確保されていること
  • [0530] 振替が行われた場合、当該休日は労働日」となり、休日に労働させることにならない。したがって、休日労働等に対する割増賃金の支払いは不要となる。(昭和23年4月19日基収1397号、昭和63年3月14日基発150号)

休日の振替であっても、割増賃金が必要となる場合

  • [0531] 休日を振り替えたことにより当該「週の労働時間が1週間の法定労働時間を超えるときは、その超えた時間については時間外労働となり、時間外労働に関する36協定及び割増賃金の支払が必要である。(昭和63年3月14日基発150号)

代休

  • [0532] 「代休」とは、休日労働や長時間の時間外労働、深夜労働が行われた場合に、その代償措置として、以後の特定の労働日の労働義務を免除するものをいう。(コンメンタール35条)
  • [0533] 代休を与えても、休日労働等でなくなるものではないため、休日労働等に対する割増賃金の支払いが必要となる。(昭和23年4月19日基収1397号、昭和63年3月14日基発150号、コンメンタール35条)
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