「社労士試験」は昔と性格が変わってきた。指導に当たってきてそう感じています。
このことを一番強く実感しているのはわたしだと思っています。なぜなら社労士試験を第1回目から見ているからです。初期の頃の問題は、本当に単純な条文問題が多いです。知っているか知らないかを問う問題。これが圧倒的。労働法や社会保険の基本的な仕組みが問われていました。
ただ、このように書くと、「昔は易しかったんだ」と思われるかもしれませんが、そんなことはなかったのではないかと思います。今のようにわからないことがあればネットを利用してあっという間に検索ができる世の中と異なり、当時は本当に限られた情報の中で知識を吸収せざるをえなかったからです。
また、現在の「選択式」と異なり、当時は「記述式」でした。これは本当に難しかったと思います。特に一般常識のそれは、知識がない場合には全く解答することができなかったろうことが容易に想像できます。
現在のわが国の組織労働者は、約1,080万人で、雇用労働者の約 A %にあたる。わが国の労働組合の組織形態は、欧米におけるような地域別、職能別組織や B をとるものは極めて少なく、ほとんどが企業ないし事業所を単位とする C をとっている。次に、代表的な全国組織としては、 D 、 E がある。組織人員は、それぞれ420万人、 F 万にであるが、前者がその約60%が G であるのに対し後者はそのほとんどが H によって占められている。
参考までに記念すべき第1回目の一般常識記述式の問題を載せてみました。答えは、順に36(%)、産業別組織、企業別組織、日本労働組合総評議会、全日本労働総同盟組合、177、公務員、民間企業労働者です。
おそらく当時の白書からの出題ではないかと思われますが、なかなか歯ごたえのある問題です。選択肢が与えられても苦戦しそうな内容です。当時の受験生はこの恐怖と向かい合って受験していたわけです(もっとも合格率はずっと高かったでしょうが)。
知っているか知らないかを問う問題を、わたしは「1秒問題」と呼んでいます。知っていれば秒殺で対応することができる。これに対し、最近の問題は、問題文を一読してもすぐには答えが出ない。いうなれば「1分問題」が増加しているといえます。1分問題は、時間がかかる、考えた結果が必ずしも正答とは限らない、体力を消耗する、そういった性質を持っています。ですので、こういった問題は後回しにし、1秒問題をちゃっちゃっと終わらせて1分問題にいかに時間を配分するかといった試験全体を一つの塊と考えどう対応するかといった経験が必要となってきます。
独学の人は得てして、これが苦手です。直前期の公開模擬試験を一回受けたくらいではその経験はなかなか積めないからです。大抵の場合は、点数や偏差値といったことにばかり気を取られ、こういった点は全く重要視されません(もっとも、通学生の場合であっても、直前期の相談は「模擬の点数が伸びません」ばかりですが)。
いずれにしても、初期のインプット期にやるべきことは一つしかありません。「1秒問題」として対応することができる問題を増やすことです。その際注意すべきことは、身につける論点を一つに絞ることです。一般的に過去問には、複数の論点が盛り込まれています。その場合には、きちんと「この問題の論点は、これとこれ。わたしはこの論点が苦手だからきちんと覚えよう」といったような姿勢で解くことが重要になってきます。漫然と○×だけで次の問題に移らないように意識をしなければなりません。
社労士合格勉強のコツ
問題演習を行う際は、論点をしっかり意識しながら解答する習慣を身につけましょう。
本試験で「1秒問題」として対応できるだけの「確実性のある知識」を早い時期から育てる。
あいまいな知識は本試験では全く役に立たないことを肝に銘じましょう。