済生会中央病院事件

済生会中央病院事件

平成元年12月11日最高裁判所第二小法廷
ストーリー
 Y病院は、X労働組合との間で、労使協定を締結することなく、15年以上チェック・オフを継続してきたが、Y病院において新たにA労働組合が結成され、相当数の組合員がこのA組合に流れ、X組合が従業員の過半数で組織されているかどうか疑わしくなったことを契機に、チェック・オフの中止をX組合に通告をした。
 X組合はチェック・オフの中止は「不当労働行為」に該当するものとして地方労働委員会に救済の申立をした。

 労使協定を結んでいないのに、チェック・オフを継続するわけにはいきません。

 そもそも、過半数労働組合かどうかもあやしいですし。

 15年以上もチェック・オフを継続してきました。どうして中止するんですか。これは不当労働行為です。

 結 論  X労働組合敗訴
 チェック・オフを中止する時点において、組合Xが過半数労働組合か疑わしく、チェック・オフが長年の慣行であるといっても労使協定がない点で労基法24条1項本文の規定(全額払の原則)に違反し、加えて、チェック・オフをすべき組合員を特定することが困難な事情にあるため、チェック・オフの中止は不当労働行為とはいえない。
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労使協定を締結することなく行われてきたチェック・オフを中止することは不当労働行為に該当するか。

 労基法24条1項本文は、賃金はその  全額  を労働者に支払わなければならないとしているが、その趣旨は、労働者の賃金はその生活を支える重要な財源で日常必要とするものであるから、これを労働者に確実に受領させ、その生活に不安のないようにすることが労働政策の上から極めて必要なことである、というにある
 これを受けて、同項但書は、(ア)当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者が使用者との間で賃金の一部を控除して支払うことに合意し、かつ、(イ) これを書面による協定とした場合に限り、労働者の保護に欠けるところはないとして、同項本文違反が成立しないこととした。
 しかして、いわゆるチェック・オフも労働者の賃金の一部を控除するものにほかならないから、同項但書の要件を具備しない限り、これをすることができないことは当然である。たしかに、原審のいうように、チェック・オフは労働組合の団結を維持、強化するものであるが、その組合員すなわち労働者自体は賃金の一部を控除されてその支払いを受けるのであるから、右に述べた同項但書の趣旨によれば、チェック・オフをする場合には右(ア)、(イ)の要件を具備する必要がないということはできない。
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過去問

rih11B次の文中の     の部分を適当な語句で埋め、完全な文章とせよ。

 チェックオフとは、労働組合費徴収の一つの方法であり、使用者が労働者に賃金を渡す前に賃金から組合費を差し引き、一括して組合に渡すやり方であるが、これは労働基準法上の  B  の原則に抵触することとなるため、その実施のためには同法で定める要件を備えた労使協定の締結が必要となる。

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全額払
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