朝日放送事件

朝日放送事件

平成7年2月28日最高裁判所第三小法廷
ストーリー
 放送会社Y社は、A社及びC社と、テレビ番組制作業務につき請負契約を締結し、B社はA社との請負契約によりA社が請け負った業務の下請けをしていた(請負三社)。請負三社は、従業員をY社に派遣しており、派遣された従業員は、Y社の指示に従い、Y社の機材等を使用し、番組制作業務に従事していた。実際の作業の進行はすべてY社のディレクターの指揮監督の下に行われていた。
 請負三社の従業員のY社における勤務の結果は従業員の申告により出勤簿に記載され、請負三社はこれに基づいて残業時間の計算をした上、毎月の賃金を支払っていた。
 X労働組合は、民間放送の下請企業を含む従業員で組織された労働組合であり、請負三社がY社に派遣していた従業員の一部がこれに加入していた。X組合は、Y社に対して賃上げ、下請け会社の従業員の社員化などの団体交渉を申し入れたが、Y社は使用者ではないことを理由として、交渉事項のいかんにかかわらず、いずれもこれを拒否した。 X組合は、このことを不満として、訴えを提起した。

 

私どもは、請負三社の使用者ではありませんので、

団体交渉に応じる義務はありません。

 

 

組合は、請負三社の従業員の賃上げ、

社員化を要求します。

 

 

 結 論  X労働組合勝訴
労働者の基本的な労働条件等について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にある場合には、その限りにおいて、事業主は同条の「使用者」に当たる。

労働組合法にいう「使用者」とは、いったいどのようなものか。

 労働組合法7条にいう「使用者」の意義について検討するに、一般に使用者とは労働契約上の雇用主をいうものであるが、同条が団結権の侵害に当たる一定の行為を不当労働行為として排除、是正して正常な労使関係を回復することを目的としていることにかんがみると、雇用主以外の事業主であっても、雇用主から労働者の派遣を受けて自己の業務に従事させ、その労働者の基本的な労働条件等について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にある場合には、その限りにおいて、右事業主は同条の「使用者」に当たるものと解するのが相当である。
 これを本件についてみるに、請負三社は、Y社とは別個独立の事業主体として、テレビの番組制作の業務につきY社との間の請負契約に基づき、その雇用する従業員をY社の下に派遣してその業務に従事させていたものであり、もとより、Y社は右従業員に対する関係で労働契約上の雇用主に当たるものではない。しかしながら、前記の事実関係によれば、Y社は、請負三社から派遣される従業員が従事すべき業務の全般につき、編成日程表、台本及び制作進行表の作成を通じて、作業日時、作業時間、作業場所、作業内容等その細部に至るまで自ら決定していたこと、請負三社は、単に、ほぼ固定している一定の従業員のうちのだれをどの番組制作業務に従事させるかを決定していたにすぎないものであること、Y社の下に派遣される請負三社の従業員は、このようにして決定されたことに従い、Y社から支給ないし貸与される器材等を使用し、Y社の作業秩序に組み込まれてY社の従業員と共に番組制作業務に従事していたこと、請負三社の従業員の作業の進行は、作業時間帯の変更、作業時間の延長、休憩等の点についても、すべてY社の従業員であるディレクターの指揮監督下に置かれていたことが明らかである。これらの事実を総合すれば、Y社は、実質的にみて、請負三社から派遣される従業員の勤務時間の割り振り、労務提供の態様、作業環境等を決定していたのであり、右従業員の基本的な労働条件等について、雇用主である請負三社と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあったものというべきであるから、その限りにおいて、労働組合法7条にいう「使用者」に当たるものと解するのが相当である。
答えを見る
 労働組合法7条にいう「使用者」の意義について検討するに、一般に使用者とは労働契約上の雇用主をいうものであるが、同条が団結権の侵害に当たる一定の行為を不当労働行為として排除、是正して正常な労使関係を回復することを目的としていることにかんがみると、雇用主以外の事業主であっても、雇用主から労働者の派遣を受けて自己の業務に従事させ、その労働者の基本的な労働条件等について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にある場合には、その限りにおいて、右事業主は同条の「使用者」に当たるものと解するのが相当である。
 これを本件についてみるに、請負三社は、Y社とは別個独立の事業主体として、テレビの番組制作の業務につきY社との間の請負契約に基づき、その雇用する従業員をY社の下に派遣してその業務に従事させていたものであり、もとより、Y社は右従業員に対する関係で労働契約上の雇用主に当たるものではない。しかしながら、前記の事実関係によれば、Y社は、請負三社から派遣される従業員が従事すべき業務の全般につき、編成日程表、台本及び制作進行表の作成を通じて、作業日時、作業時間、作業場所、作業内容等その細部に至るまで自ら決定していたこと、請負三社は、単に、ほぼ固定している一定の従業員のうちのだれをどの番組制作業務に従事させるかを決定していたにすぎないものであること、Y社の下に派遣される請負三社の従業員は、このようにして決定されたことに従い、Y社から支給ないし貸与される器材等を使用し、Y社の作業秩序に組み込まれてY社の従業員と共に番組制作業務に従事していたこと、請負三社の従業員の作業の進行は、作業時間帯の変更、作業時間の延長、休憩等の点についても、すべてY社の従業員であるディレクターの指揮監督下に置かれていたことが明らかである。これらの事実を総合すれば、Y社は、実質的にみて、請負三社から派遣される従業員の勤務時間の割り振り、労務提供の態様、作業環境等を決定していたのであり、右従業員の基本的な労働条件等について、雇用主である請負三社と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあったものというべきであるから、その限りにおいて、労働組合法7条にいう「使用者」に当たるものと解するのが相当である。

 

トップへ戻る