御国ハイヤー事件

御国ハイヤー事件

平成4年10月2日最高裁判所第二小法廷
ストーリー
 タクシー会社Y社において、労働組合と賃上げ交渉を行ってきたが、交渉は物別れに終わった。組合員Xらを含む組合側はストライキを行うこととし、団体交渉の席上で、その実施の通告をした。これに対しY社は、ストライキ中は管理職によりタクシーを稼働させることを通知し、労働組合側にこの稼働の妨害をしないよう要請した。
 ストライキは実施されたが、労働者XらはY社の車庫前においてゴザなどを敷き、座り込んだり、寝転んだりしてその稼働を阻止した。Y社は、労働者Xらに退去を命じたが、組合側はこれに応じることはなかった。スト終了後、Y社はタクシーを稼働できなかったことにつき、不法行為に基づく損害賠償を請求した。労働者Xらは、このことを不服として、訴えを提起した。

 

争議中であっても、会社側には

操業継続の自由がある。

 

車両を明け渡すと代替要員を使って

操業を続けてしまう。ストライキの

実効性が失われてしまう。

 

 結 論  X労働組合敗訴
 タクシー業界において、ストの期間中、非組合員等によるタクシーの運行を阻止するために、営業用車両を労働者側の排他的占有下に置く行為は許されず、このような運行阻止行為は正当な争議行為ではない。

「正当な争議行為」とはどのようなものをいうか(ピケッティング)。

 Xらは、互いに意思を通じて、Y社の管理に係る本件タクシーを労働組合の排他的占有下に置き、Y社がこれを搬出して稼働させるのを実力で阻止したものといわなければならない。もっとも、原審の認定した事実によれば、労働組合は、労働条件の改善の要求を貫徹するために本件ストライキを行ったものであり、その目的において問題とすべき点はなく、……Xらがその搬出を暴力等の実力行使をもって妨害するといった事態には至らなかったことは、原判示のとおりである。しかしながら、これらの事情を考慮に入れても、Xらの右自動車運行阻止の行為は、前記説示に照らし、争議行為として正当な範囲にとどまるものということはできず、違法の評価を免れないというべきである。
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 Xらは、互いに意思を通じて、Y社の管理に係る本件タクシーを労働組合の排他的占有下に置き、Y社がこれを搬出して稼働させるのを実力で阻止したものといわなければならない。もっとも、原審の認定した事実によれば、労働組合は、労働条件の改善の要求を貫徹するために本件ストライキを行ったものであり、その目的において問題とすべき点はなく、……Xらがその搬出を暴力等の実力行使をもって妨害するといった事態には至らなかったことは、原判示のとおりである。しかしながら、これらの事情を考慮に入れても、Xらの右自動車運行阻止の行為は、前記説示に照らし、争議行為として正当な範囲にとどまるものということはできず、違法の評価を免れないというべきである。

 

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