日立メディコ事件
昭和61年12月4日最高裁判所第一小法廷
ストーリー
Y社は、契約期間を2か月とする臨時員Xに対し、5回にわたって労働契約を更新してきた。Y社の臨時員は、景気変動に伴う受注の変動に応じて雇用量の調整を図る目的で設けられたものであり、その採用に当たっては、学科試験や技能試験は行われず、面接において健康状態、経歴等を尋ねるのみで採用を決定するという簡易な方法をとっていた。
Y社は、臨時員Xに対し、景気変動に伴う受注の変動に伴う雇止めを行ったところ、臨時員Xは、この雇止めを不服として、訴えを提起した。
Y社は、契約期間を2か月とする臨時員Xに対し、5回にわたって労働契約を更新してきた。Y社の臨時員は、景気変動に伴う受注の変動に応じて雇用量の調整を図る目的で設けられたものであり、その採用に当たっては、学科試験や技能試験は行われず、面接において健康状態、経歴等を尋ねるのみで採用を決定するという簡易な方法をとっていた。
Y社は、臨時員Xに対し、景気変動に伴う受注の変動に伴う雇止めを行ったところ、臨時員Xは、この雇止めを不服として、訴えを提起した。
長い間ありがとうございました。
臨時員としての期間が満了しました。
今回で雇止めです。
2箇月契約を5回も更新しているのだから、
これは解雇に該当します。
結 論 (労働者X敗訴)
独立採算制がとられている工場において、事業上やむを得ない理由により人員削減をする必要があり、その余剰人員を他の事業部門へ配置転換する余地もなく、臨時員全員の雇止めが必要であると判断される場合には、希望退職者の募集に先立ち臨時員の雇止めが行われてもやむを得ない。
独立採算制がとられている工場において、事業上やむを得ない理由により人員削減をする必要があり、その余剰人員を他の事業部門へ配置転換する余地もなく、臨時員全員の雇止めが必要であると判断される場合には、希望退職者の募集に先立ち臨時員の雇止めが行われてもやむを得ない。
有期労働契約を反復していた場合、期間満了により雇止めをすることができるか。
Y社の臨時員は、季節的労務や特定物の製作のような臨時的作業のために雇用されるものではなく、その雇用関係はある程度の継続が期待されていたものであり、上告人との間においても五回にわたり契約が更新されているのであるから、このような労働者を契約期間満了によつて雇止めにするに当たつては、解雇に関する法理が類推され、解雇であれば解雇権の濫用、信義則違反又は不当労働行為などに該当して解雇無効とされるような事実関係の下に使用者が新契約を締結しなかつたとするならば、期間満了後における使用者と労働者間の法律関係は従前の労働契約が更新されたのと同様の法律関係となるものと解せられる。
しかし、右臨時員の雇用関係は比較的簡易な採用手続で締結された短期的有期契約を前提とするものである以上、雇止めの効力を判断すべき基準は、いわゆる終身雇用の期待の下に期間の定めのない労働契約を締結しているいわゆる本工を解雇する場合とはおのずから合理的な差異があるべきである。
したがつて、……独立採算制がとられているY社において、事業上やむを得ない理由により人員削減をする必要があり、その余剰人員を他の事業部門へ配置転換する余地もなく、臨時員全員の雇止めが必要であると判断される場合には、これに先立ち、期間の定めなく雇用されている従業員につき希望退職者募集の方法による人員削減を図らなかつたとしても、それをもつて不当・不合理であるということはできず、右希望退職者の募集に先立ち臨時員の雇止めが行われてもやむを得ないというべきである。 原判決の右判断は、本件労働契約に関する前示の事実関係の下において正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。
しかし、右臨時員の雇用関係は比較的簡易な採用手続で締結された短期的有期契約を前提とするものである以上、雇止めの効力を判断すべき基準は、いわゆる終身雇用の期待の下に期間の定めのない労働契約を締結しているいわゆる本工を解雇する場合とはおのずから合理的な差異があるべきである。
したがつて、……独立採算制がとられているY社において、事業上やむを得ない理由により人員削減をする必要があり、その余剰人員を他の事業部門へ配置転換する余地もなく、臨時員全員の雇止めが必要であると判断される場合には、これに先立ち、期間の定めなく雇用されている従業員につき希望退職者募集の方法による人員削減を図らなかつたとしても、それをもつて不当・不合理であるということはできず、右希望退職者の募集に先立ち臨時員の雇止めが行われてもやむを得ないというべきである。 原判決の右判断は、本件労働契約に関する前示の事実関係の下において正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。
答えを見る
Y社の臨時員は、季節的労務や特定物の製作のような臨時的作業のために雇用されるものではなく、その雇用関係はある程度の継続が期待されていたものであり、上告人との間においても五回にわたり契約が更新されているのであるから、このような労働者を契約期間満了によつて雇止めにするに当たつては、解雇に関する法理が類推され、解雇であれば解雇権の濫用、信義則違反又は不当労働行為などに該当して解雇無効とされるような事実関係の下に使用者が新契約を締結しなかつたとするならば、期間満了後における使用者と労働者間の法律関係は従前の労働契約が更新されたのと同様の法律関係となるものと解せられる。
しかし、右臨時員の雇用関係は比較的簡易な採用手続で締結された短期的有期契約を前提とするものである以上、雇止めの効力を判断すべき基準は、いわゆる終身雇用の期待の下に期間の定めのない労働契約を締結しているいわゆる本工を解雇する場合とはおのずから合理的な差異があるべきである。
したがつて、……独立採算制がとられているY社において、事業上やむを得ない理由により人員削減をする必要があり、その余剰人員を他の事業部門へ配置転換する余地もなく、臨時員全員の雇止めが必要であると判断される場合には、これに先立ち、期間の定めなく雇用されている従業員につき希望退職者募集の方法による人員削減を図らなかつたとしても、それをもつて不当・不合理であるということはできず、右希望退職者の募集に先立ち臨時員の雇止めが行われてもやむを得ないというべきである。 原判決の右判断は、本件労働契約に関する前示の事実関係の下において正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。
しかし、右臨時員の雇用関係は比較的簡易な採用手続で締結された短期的有期契約を前提とするものである以上、雇止めの効力を判断すべき基準は、いわゆる終身雇用の期待の下に期間の定めのない労働契約を締結しているいわゆる本工を解雇する場合とはおのずから合理的な差異があるべきである。
したがつて、……独立採算制がとられているY社において、事業上やむを得ない理由により人員削減をする必要があり、その余剰人員を他の事業部門へ配置転換する余地もなく、臨時員全員の雇止めが必要であると判断される場合には、これに先立ち、期間の定めなく雇用されている従業員につき希望退職者募集の方法による人員削減を図らなかつたとしても、それをもつて不当・不合理であるということはできず、右希望退職者の募集に先立ち臨時員の雇止めが行われてもやむを得ないというべきである。 原判決の右判断は、本件労働契約に関する前示の事実関係の下において正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。