大平製紙事件

大平製紙事件

昭和37年5月18日最高裁判所第二小法廷
ストーリー
 Xは、A社社長の紹介によりY製紙工場に塗料技術指導・研究を目的として週5日赴くことになり、Y社は当初、A社に対して職員の「派遣」を受けたことに対する「出張工員」という形式で、1日当たり1,000円を支払っていた。その後、Y社はXを「嘱託」とし、直接Xに本給のほか、時給の2割5分増で残業手当を支払うこととなった。 
 Xは一般従業員とは多少違った待遇を受けてはいたが、当初は週5日、後には週6日出勤し、出勤時間も午前9時頃から午後4時頃までとほぼ一定していた。
 このような勤務状況下において、XはY社における研究内容について自己単独名義で特許出願を行った。Y社は、Xが会社に無許可でX個人名義で出願したことは不当であるとし、その取下げあるいは会社との共同名義に改めることを要求したが、Xは承知しなかった。そのため、Y社は解雇予告手当を支払い、Xに「解雇」の意思表示を行った。
 Y社には、労働協約が存在し、これには解雇事由が制限的に列挙されていたが、今回の事由はそのいずれにも該当しなかった。この労働協約の適用を受けない⾮組合員は、嘱託をはじめ、会社の利益代表者、短期雇⽤者とされていたが、X以外の嘱託は医師等であって週1回程度の出勤であった。
 Xは、自らは非組合員であるが、一般従業員と等しい労働条件の下にいたのだから、労働者であり、いわゆる労働協約の拡張適用が行われると主張し、この解雇は労働協約違反、解雇権濫用であるとして訴えを提起した。
 

労働協約の適用を受けない嘱託のあなたは、

労働協約に縛られません。解雇します。

他の嘱託とは働き方がぜんぜん違う。

私は労働者だから、労働協約の適用を受けます。

 結 論  労働者X勝訴
 一般従業員とは異なり、直接加工部長の指揮命令に服することなくむしろ同部長の相談役ともいうべき立場にあり、また遅刻、早退等によって給与の減額を受けることがなかったとはいえ、週6日間朝9時から夕方4時まで勤務し、毎月一定の本給のほか時給の2割5分増の割合で計算した残業手当の支払をも受けていたというのであるから、当該嘱託契約は労働契約であって、Xは労働法の適用を受ける労働者である。 
 

「嘱託」扱いの者は労働者に該当するか。

 原判決の確定した事実によれば、Xの職務内容は、Y社において「ドクター塗装機械」用の塗料製法の指導、塗料の研究であり、一般従業員とは異なり、直接加工部長の指揮命令に服することなくむしろ同部長の相談役ともいうべき立場にあり、また遅刻、早退等によって給与の減額を受けることがなかったとはいえ、週六日間朝九時から夕方四時まで勤務し、毎月一定の本給のほか時給の二割五分増の割合で計算した残業手当の支払を受けていたというのであるから、本件嘱託契約が雇用契約(厳密にいえば、労働契約)であって、Xは労働法の適用を受くべき労働者であるとした原審の判断は、正当であって、所論の違法はない。
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 原判決の確定した事実によれば、被上告人の職務内容は、上告人会社において「ドクター塗装機械」用の塗料製法の指導、塗料の研究であり、一般従業員とは異なり、直接加工部長の指揮命令に服することなくむしろ同部長の相談役ともいうべき立場にあり、また遅刻、早退等によって給与の減額を受けることがなかったとはいえ、週六日間朝九時から夕方四時まで勤務し、毎月一定の本給のほか時給の二割五分増の割合で計算した残業手当の支払を受けていたというのであるから、本件嘱託契約が雇用契約(厳密にいえば、労働契約)であって、Xは労働法の適用を受くべき労働者であるとした原審の判断は、正当であって、所論の違法はない。

 

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