国鉄札幌運転区事件
昭和54年10月30日最高裁判所第三小法廷
ストーリー
国鉄労組は春闘にあたりビラの貼り付けの指令を発し、A支部でもその実施を指令していた。
組合員Xらは、詰所において使用している自分のロッカーにビラ2枚を並べて貼付した。
Y社(国鉄)は、組合掲示板以外への文書の掲示を禁じていたため、組合員Xらに注意してビラをはがすことを命じたが、組合員Xらは、これに従わなかった。
Y社は組合員Xらを戒告処分に付したため、組合員Xらがこの処分を不当として訴えを提起した。
国鉄労組は春闘にあたりビラの貼り付けの指令を発し、A支部でもその実施を指令していた。
組合員Xらは、詰所において使用している自分のロッカーにビラ2枚を並べて貼付した。
Y社(国鉄)は、組合掲示板以外への文書の掲示を禁じていたため、組合員Xらに注意してビラをはがすことを命じたが、組合員Xらは、これに従わなかった。
Y社は組合員Xらを戒告処分に付したため、組合員Xらがこの処分を不当として訴えを提起した。
ビラの貼付けは、総合掲示板に限って認めます。
それ以外ははがして下さい。従わなければ懲戒
処分とします。
労働組合の財産に手をかけないで下さい。
結 論 (労働者Xら敗訴)
① Y社は、職場環境を適正良好に保持し規律のある業務の運営態勢を確保するため、会社の備品を許可された目的以外に利用してはならない旨を就業規則等に定めることによって業務命令を発することができ、違反する者には企業秩序を乱すものとして、懲戒処分を行うことができる。
② 労働組合による企業の物的施設の利用は、使用者との団体交渉等による合意に基づいて行われるべきものであり、備え付けのロッカーにビラを貼付する行為は正当な組合活動には当たらない。
① Y社は、職場環境を適正良好に保持し規律のある業務の運営態勢を確保するため、会社の備品を許可された目的以外に利用してはならない旨を就業規則等に定めることによって業務命令を発することができ、違反する者には企業秩序を乱すものとして、懲戒処分を行うことができる。
② 労働組合による企業の物的施設の利用は、使用者との団体交渉等による合意に基づいて行われるべきものであり、備え付けのロッカーにビラを貼付する行為は正当な組合活動には当たらない。
企業はなぜ懲戒処分を行うことができるのか。
思うに、企業は、その存立を維持し目的たる事業の円滑な運営を図るため、それを構成する人的要素及びその所有し管理する物的施設の両者を総合し合理的・合目的的に配備組織して企業秩序を定立し、この企業秩序のもとにその活動を行うものであって、企業は、その構成員に対してこれに服することを求めうべく、その一環として、職場環境を適正良好に保持し規律のある業務の運営態勢を確保するため、その物的施設を許諾された目的以外に利用してはならない旨を、一般的に規則をもって定め、又は具体的に指示、命令することができ、これに違反する行為をする者がある場合には、企業秩序を乱すものとして、当該行為者に対し、その行為の中止、原状回復等必要な指示、命令を発し、又は規則に定めるところに従い制裁として懲戒処分を行うことができるもの、と解するのが相当である。
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思うに、企業は、その存立を維持し目的たる事業の円滑な運営を図るため、それを構成する人的要素及びその所有し管理する物的施設の両者を総合し合理的・合目的的に配備組織して企業秩序を定立し、この企業秩序のもとにその活動を行うものであって、企業は、その構成員に対してこれに服することを求めうべく、その一環として、職場環境を適正良好に保持し規律のある業務の運営態勢を確保するため、その物的施設を許諾された目的以外に利用してはならない旨を、一般的に規則をもって定め、又は具体的に指示、命令することができ、これに違反する行為をする者がある場合には、企業秩序を乱すものとして、当該行為者に対し、その行為の中止、原状回復等必要な指示、命令を発し、又は規則に定めるところに従い制裁として懲戒処分を行うことができるもの、と解するのが相当である。
使用者の許諾を得ないで、使用者の物的施設を利用することはできるか。
……当該企業に雇用される労働者のみをもつて組織される労働組合(いわゆる企業内組合)の場合にあつては、当該企業の物的施設内をその活動の主要な場とせざるを得ないのが実情であるから、その活動につき右物的施設を利用する必要性の大きいことは否定することができないところではあるが、労働組合による企業の物的施設の利用は、本来、使用者との団体交渉等による合意に基づいて行われるべきものであることは……明らかであつて、利用の必要性が大きいことのゆえに、労働組合又はその組合員において企業の物的施設を組合活動のために利用しうる権限を取得し、また、使用者において労働組合又はその組合員の組合活動のためにする企業の物的施設の利用を受忍しなければならない義務を負うとすべき理由はない、というべきである。
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……当該企業に雇用される労働者のみをもつて組織される労働組合(いわゆる企業内組合)の場合にあつては、当該企業の物的施設内をその活動の主要な場とせざるを得ないのが実情であるから、その活動につき右物的施設を利用する必要性の大きいことは否定することができないところではあるが、労働組合による企業の物的施設の利用は、本来、使用者との団体交渉等による合意に基づいて行われるべきものであることは……明らかであつて、利用の必要性が大きいことのゆえに、労働組合又はその組合員において企業の物的施設を組合活動のために利用しうる権限を取得し、また、使用者において労働組合又はその組合員の組合活動のためにする企業の物的施設の利用を受忍しなければならない義務を負うとすべき理由はない、というべきである。
過去問
rkh1706D企業は、その存立を維持し目的たる事業の円滑な運営を図るため、企業秩序を定立し、この企業秩序のもとにその活動を行うものであって、企業は、その構成員に対してこれに服することを求めることができ、これに違反する行為をする者がある場合には、企業秩序を乱すものとして、制裁として懲戒処分を行うことができるところから、使用者が労働者を懲戒するには、必ずしもあらかじめ就業規則において懲戒の種別及び事由を定めておくことを要するものではないとするのが最高裁の判例である。
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×
ri2402D労働組合法等によると、労働組合による企業施設の利用は、とりわけ我が国の企業別労働組合にとっては必要性が大きいものであり、使用者は、労使関係における互譲の精神に基づき、労働組合又はその組合員の組合活動のためにする企業の物的施設の利用を、特段の事情がない限り、受忍する義務を負うとするのが、最高裁判所の判例である。
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rks50DE使用者は、労働者が服務規律に違反する等、職場秩序を乱すときは、一定の制裁を科し得るものとされる。この制裁について、定めをするときは、使用者は労働契約の締結に際し、これを労働者に明示しなければならず、また、常時10人以上の労働者を使用する使用者にあっては、就業規則にその D 及び E に関する事項を記載しなければならない。
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D→種類
E→事由