東芝労働組合小向支部・東芝事件

東芝労働組合小向支部・東芝事件

平成19年2月2日最高裁判所第二小法廷
ストーリー
 労働者Xは、Y社に雇用され、工場の業務に従事した。労働者Xは、同工場の従業員で構成されているA労働組合に加入した。Y社とA組合が締結した労働協約には、ユニオン・ショップ協定とチェック・オフ協定の条項があった。この条項に基づき、Y社は、A組合の組合費のチェック・オフをしている。
 労働者Xは、割増賃金の扱い等に不満を持ち、B組合に加入したうえで、A組合に対し脱退届を送付したが、A組合は、その受理を保留し、脱退を思いとどまるよう労働者Xを説得した。労働者X及びB組合は、Y社に対し、労働者XがB組合に加入したことを通知するとともに団体交渉を申し入れたが、Y社は、A組合が脱退届の受理を留保していることを理由に団体交渉に応じなかった。
 労働者X及びB組合は、これが不当労働行為に当たるとして地方労働委員会に対して救済を申し立てた。この申立てにより、労働者XはA組合に復帰するが、B組合にも籍を置くこと条件として和解金が支払われた。

 その後、労働者Xは、B組合を脱退し、新たに結成されたC組合に加入した。労働者Xは、工場内での配置転換等に不満を持ち、その支援をA組合に求めたが、その対応が不十分であったとして、再びA組合に対し脱退の意思表示をし、Y社に対しチェック・オフの中止を申し入れた。しかし、これに応じないY社及びA組合に対し、労働者Xは訴えを提起した。

 

和解で、A組合に所属することが義務付けられたのに、

脱退するのはおかしいではないか。

 

私には組合を脱退する自由があるはずです。

 結 論  労働者X勝訴
 労働組合の組合員に対する統制権は、組合員が組合からの脱退の自由を前提として初めて容認されるものであるとして、Xの脱退を認める。  三井美唄炭鉱労組事件

ユニオン・ショップ協定を締結した組合を脱退し、他の労働組合に加入することはできるか。

⑴ 一般に、労働組合の組合員は、脱退の自由、すなわち、その意思により組合員としての地位を離れる自由を有するものと解される。そうすると、……本件付随合意は、上記の脱退の自由を制限し、XがA労働組合から脱退する権利をおよそ行使しないことを、会社に対して約したものであることとなる。
⑵ 本件付随合意は、Xと会社との間で成立したものであるから、その効力は、原則として、Xと合意の相手方であるY社との間において発生するものであり、Xが本件付随合意に違反してA労働組合から脱退する権利を行使しても、Y社との間で債務不履行の責任等の問題を生ずるにとどまる。前記事実関係の下においては、合意の相手方でないA労働組合との間でもそのような問題を生ずると解すべき特別の根拠となる事由は認められない。
⑶ また、労働組合は、組合員に対する統制権の保持を法律上認められ、組合員はこれに服し、組合の決定した活動に加わり、組合費を納付するなどの義務を免れない立場に置かれるものであるが、それは、組合からの脱退の自由を前提として初めて容認されることである。そうすると、本件付随合意のうち、A労働組合から脱退する権利をおよそ行使しないことをXに義務付けて、脱退の効力そのものを生じさせないとする部分は、脱退の自由という重要な権利を奪い、組合の統制への永続的な服従を強いるものであるから、公序良俗に反し、無効であるというべきである。
⑷ 以上のとおりであるから、いずれにしても、本件付随合意に違反することを理由に、本件脱退がその効力を生じないということはできない。そして、前記事実関係の下においては、A労働組合の主張するその余の理由により本件脱退が無効であるとすることはできず、また、会社の主張するその余の理由により、Xがチェック・オフの中止を求めることは許されないとすることもできない。
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⑴ 一般に、労働組合の組合員は、脱退の自由、すなわち、その意思により組合員としての地位を離れる自由を有するものと解される。そうすると、……本件付随合意は、上記の脱退の自由を制限し、XがA労働組合から脱退する権利をおよそ行使しないことを、会社に対して約したものであることとなる。
⑵ 本件付随合意は、Xと会社との間で成立したものであるから、その効力は、原則として、Xと合意の相手方であるY社との間において発生するものであり、Xが本件付随合意に違反してA労働組合から脱退する権利を行使しても、Y社との間で債務不履行の責任等の問題を生ずるにとどまる。前記事実関係の下においては、合意の相手方でないA労働組合との間でもそのような問題を生ずると解すべき特別の根拠となる事由は認められない。
⑶ また、労働組合は、組合員に対する統制権の保持を法律上認められ、組合員はこれに服し、組合の決定した活動に加わり、組合費を納付するなどの義務を免れない立場に置かれるものであるが、それは、組合からの脱退の自由を前提として初めて容認されることである。そうすると、本件付随合意のうち、A労働組合から脱退する権利をおよそ行使しないことをXに義務付けて、脱退の効力そのものを生じさせないとする部分は、脱退の自由という重要な権利を奪い、組合の統制への永続的な服従を強いるものであるから、公序良俗に反し、無効であるというべきである。
⑷ 以上のとおりであるから、いずれにしても、本件付随合意に違反することを理由に、本件脱退がその効力を生じないということはできない。そして、前記事実関係の下においては、A労働組合の主張するその余の理由により本件脱退が無効であるとすることはできず、また、会社の主張するその余の理由により、Xがチェック・オフの中止を求めることは許されないとすることもできない。
 

通達

(昭和32年1月14日発労1号)
3  労働組合は自由なる団結であり、その加入脱退は個人の自由意思に基くべきものであるが、団体である以上、組合員たるものは民主的に決定された団体の意思に服し、統制を受けることは当然である。しかし、その統政権には自らなる限界がある。
 即ち、第一に労働組合の統制権が組合本来の目的を達成する限度内でのみ認められることは当然である。これ以外の目的、たとえば、公職選挙において特定の候補者を支持応援するために統制権を行使することは許されるべきではない。
 また、労働組合が組合員の基本的人権を侵し得ないことはいうまでもないから、労働組合の統制のため行いうる制裁は、組合員の労働組合に対する権利権限の制限、停止などとすべきであつて、組合員たることの否定、即ち除名を限度とする。腕力沙汰はいうに及ばず、労働者の私生活に干渉したり、自由を侵したり、不当に名誉を傷つけたり、あるいは違約金等を課することは、自由なる団結の本旨に反するであろう。
 組合員の除名問題で裁判沙汰になるものが稀でない。労働組合のような非営利団体が、内部問題を自己で処理し得ず、裁判沙汰にまでして裁判所の介入を招くようなことは遺憾なことである。被除名者にも反省すべき点はあろうが、何といつても統制権の濫用が中心問題である。過度の統制は、結局団結自体を破壊する逆効果を生ずるにすぎないことを忘れてはならない。

 

過去問

ri2402C労働組合法等によると、労働組合は、組合員に対する統制権の保持を法律上認められ、組合員はこれに服し、組合の決定した活動に加わり、組合費を納付するなどの義務を免れない立場に置かれるものであるが、それは、組合からの脱退の自由を前提として初めて容認されることであるとするのが、最高裁判所の判例である。(2402C)
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