日産自動車事件

日産自動車事件

昭和60年4月23日最高裁判所第三小法廷
ストーリー
 乗用車製造会社Y社は、従来から工場の製造部門で昼夜2交替勤務体制及び計画残業と称する恒常的な時間外・休日勤務体制をとっていた。
 Y社は、A社を合併することとなり、A社工場の製造部門にも同様の体制をとることとなった。Y社は、この勤務体制の実施に当たり、多数組合であるB組合とは事前に協議を重ねていたが、実施反対を主張している少数組合であるX組合に対しては何らの申入れもしていなかった。そして、Y社は、B組合の組合員にのみ交代勤務・残業を命じ、X組合の組合員については昼間勤務にのみ従事させ、残業を一切命じなかった。 X組合は、X組合の組合員に残業を命じないことはB組合の組合員と差別する不当労働行為であると主張して、訴えを提起した。

 

多数組合とは協議を重ねてきました。

X組合は、私達の提案に反対でしたので、

この勤務体制に組み入れると業務に支障が

生じます。

 

弱小組合だからといって、

差別的取扱いは許されません。

 結 論  X組合勝訴
 使用者は、各労働組合において中立的立場を保持しなければならない(複数組合主義)。

複数の労働組合がある場合、多数組合と優先して団体交渉を行うことは可能か。

 複数組合併存下にあつては、各組合はそれぞれ独自の存在意義を認められ、固有の団体交渉権及び労働協約締結権を保障されているものであるから、その当然の帰結として、使用者は、いずれの組合との関係においても誠実に団体交渉を行うべきことが義務づけられているものといわなければならず、また、単に団体交渉の場面に限らず、すべての場面で使用者は各組合に対し、中立的態度を保持し、その団結権を平等に承認、尊重すべきものであり、各組合の性格、傾向や従来の運動路線のいかんによつて差別的な取扱いをすることは許されないものといわなければならない。
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右のように、複数組合併存下にあつては、各組合はそれぞれ独自の存在意義を認められ、固有の団体交渉権及び労働協約締結権を保障されているものであるから、その当然の帰結として、使用者は、いずれの組合との関係においても誠実に団体交渉を行うべきことが義務づけられているものといわなければならず、また、単に団体交渉の場面に限らず、すべての場面で使用者は各組合に対し、中立的態度を保持し、その団結権を平等に承認、尊重すべきものであり、各組合の性格、傾向や従来の運動路線のいかんによつて差別的な取扱いをすることは許されないものといわなければならない。

 

【複数組合主義】
 少数組合に対しても独自の団体交渉権が保障されるとする考え方。

過去問

rih2802C同一企業内に複数の労働組合が併存する場合には、使用者は団体交渉の場面に限らず、すべての場面で各組合に対し中立的態度を保持しなければならないとするのが、最高裁判所の判例である。
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ri2502A日本の労働組合の最大の特徴は、労働組合が企業別に組織されているいわゆる企業別組合である点にあり、使用者は、労働者の労働条件の変更を行う場合には、まず企業内の多数労働組合と団体交渉を行う義務を負う。
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rih2305B労働組合法によると、一の工場事業場に複数の労働組合がある場合においては、使用者は、当該工場事業場の労働者の過半数で組織する労働組合とのみ誠実に団体交渉を行う義務を負う。
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×
 

 

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