コック食品事件
平成8年2月23日最高裁判所第二小法廷
ストーリー
労働者Xは、作業中、右手を機械にはさまれ、障害を負った。このため、労働者Xは、労災保険法から休業補償給付、障害補償給付(障害等級10級)を受給したほか、休業特別支給金及び障害特別支給金の支給も受けた。
労働者Xは、当該事故はY社が事故防止の装置を設置しなかった等安全配慮義務違反によるものであるとして、損害賠償を請求した。
Y社は、労働者Xの過失相殺のほか、労働者Xが労災保険給付及び特別支給金を受給したとして、両者の損益相殺を主張した。一審、二審とも、会社の安全配慮義務違反を認め、損害賠償を命じたが、特別支給金については、損益相殺(損害賠償額からの控除)を認めなかった。 これを不服としてY社は、訴えを提起した。
労働者Xは、作業中、右手を機械にはさまれ、障害を負った。このため、労働者Xは、労災保険法から休業補償給付、障害補償給付(障害等級10級)を受給したほか、休業特別支給金及び障害特別支給金の支給も受けた。
労働者Xは、当該事故はY社が事故防止の装置を設置しなかった等安全配慮義務違反によるものであるとして、損害賠償を請求した。
Y社は、労働者Xの過失相殺のほか、労働者Xが労災保険給付及び特別支給金を受給したとして、両者の損益相殺を主張した。一審、二審とも、会社の安全配慮義務違反を認め、損害賠償を命じたが、特別支給金については、損益相殺(損害賠償額からの控除)を認めなかった。 これを不服としてY社は、訴えを提起した。
安全配慮義務違反で、損害賠償を請求します。
特別支給金を受け取った分は、
損害賠償額から損益相殺されるべきだ。
結 論 (労働者X勝訴)
特別支給金には被災労働者の損害をてん補する性質を有するということはできず、したがって、被災労働者が労災保険から受領した特別支給金をその損害額から控除することはできない。
特別支給金には被災労働者の損害をてん補する性質を有するということはできず、したがって、被災労働者が労災保険から受領した特別支給金をその損害額から控除することはできない。
事業主行為災害における損害賠償において、特別支給金を損益相殺できるか。
労働者災害補償保険法(以下「法」という。)による保険給付は、使用者の労働基準法上の災害補償義務を政府が労働者災害補償保険(以下「労災保険」という。)によって保険給付の形式で行うものであり、業務災害又は通勤災害による労働者の損害をてん補する性質を有するから、保険給付の原因となる事故が使用者の行為によって生じた場合につき、政府が保険給付をしたときは、労働基準法84条2項の類推適用により、使用者はその給付の価額の限度で労働者に対する損害賠償の責めを免れると解され、使用者の損害賠償義務の履行と年金給付との調整に関する規定(法64条)も設けられている。また、保険給付の原因となる事故が第三者の行為によって生じた場合につき、政府が保険給付をしたときは、その給付の価額の限度で、保険給付を受けた者の第三者に対する損害賠償請求権を取得し、保険給付を受けるべき者が当該第三者から同一の事由について損害賠償を受けたときは、政府はその価額の限度で保険給付をしないことができる旨定められている(法12条の4)。他方、政府は、労災保険により、被災労働者に対し、休業特別支給金、障害特別支給金等の特別支給金を支給する(労働者災害補償保険特別支給金支給規則)が、右特別支給金の支給は、労働福祉事業の一環として、被災労働者の療養生活の援護等によりその福祉の増進を図るために行われるものであり、使用者又は第三者の損害賠償義務の履行と特別支給金の支給との関係について、保険給付の場合における前記各規定と同趣旨の定めはない。このような保険給付と特別支給金との差異を考慮すると、特別支給金が被災労働者の損害をてん補する性質を有するということはできず、したがって、被災労働者が労災保険から受領した特別支給金をその損害額から控除することはできないというべきである。
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労働者災害補償保険法(以下「法」という。)による保険給付は、使用者の労働基準法上の災害補償義務を政府が労働者災害補償保険(以下「労災保険」という。)によって保険給付の形式で行うものであり、業務災害又は通勤災害による労働者の損害をてん補する性質を有するから、保険給付の原因となる事故が使用者の行為によって生じた場合につき、政府が保険給付をしたときは、労働基準法84条2項の類推適用により、使用者はその給付の価額の限度で労働者に対する損害賠償の責めを免れると解され、使用者の損害賠償義務の履行と年金給付との調整に関する規定(法64条)も設けられている。また、保険給付の原因となる事故が第三者の行為によって生じた場合につき、政府が保険給付をしたときは、その給付の価額の限度で、保険給付を受けた者の第三者に対する損害賠償請求権を取得し、保険給付を受けるべき者が当該第三者から同一の事由について損害賠償を受けたときは、政府はその価額の限度で保険給付をしないことができる旨定められている(法12条の4)。他方、政府は、労災保険により、被災労働者に対し、休業特別支給金、障害特別支給金等の特別支給金を支給する(労働者災害補償保険特別支給金支給規則)が、右特別支給金の支給は、労働福祉事業の一環として、被災労働者の療養生活の援護等によりその福祉の増進を図るために行われるものであり、使用者又は第三者の損害賠償義務の履行と特別支給金の支給との関係について、保険給付の場合における前記各規定と同趣旨の定めはない。このような保険給付と特別支給金との差異を考慮すると、特別支給金が被災労働者の損害をてん補する性質を有するということはできず、したがって、被災労働者が労災保険から受領した特別支給金をその損害額から控除することはできないというべきである。
過去問
rsh2906D政府が被災労働者に支給する特別支給金は、社会復帰促進等事業の一環として、被災労働者の療養生活の援護等によりその福祉の増進を図るために行われるものであり、被災労働者の損害を填補する性質を有するということはできず、したがって、被災労働者の受領した特別支給金を、使用者又は第三者が被災労働者に対し損害賠償すべき損害額から控除することはできないとするのが、最高裁判所の判例の趣旨である。
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