国・園部労基署長(労災障害等級)事件

国・園部労基署長(労災障害等級)事件

平成22年5月27日地方裁判所(京都)
ストーリー
 被災労働者Xは、当時の勤務先会社の作業場で火傷(熱傷)を負った。労働者Xは、治療を受け、障害補償給付の支給請求までの間に15回の手術を受けた。労働者Xには、右頬から顎部がくぶ(あご)にかけて、頸部けいぶ(首)、胸部・腹部の全域、右背部、右上肢の肘関節ちゅうかんせつ(ひじ)以下、右下肢の膝関節しつかんせつ(膝)以下等に瘢痕はんこん(傷などが治ったあとに残るあと)及び瘢痕拘縮はんこんこうしゅく(動きが悪くなること)による著しい醜状しゅうじょうが残った。
 労働者Xは、Y労基署長に対し、労災保険法15条1項の障害補償給付の支給を請求したところ、労働者Xの上肢及び下肢の醜状障害と露出面以外の醜状障害について準用第12級とし、これと外貌がいぼうの著しい醜状障害(第12級の13「男性の外貌に著しい醜状を残すもの)を併合して、労働者Xは障害等級表第11級に該当すると認定する旨の処分がおりた。
 労働者Xは、労働者Xが女性であれば、外貌の著しい醜状障害は、第7級の12(女性の外貌に著しい醜状を残すもの)とされることは、憲法14条1項で明示的に禁じられている性別による差別的取扱いに当たるものとして訴えを提起した。
 

男性の場合は、「外貌の著しい醜状」は、

12級に該当します。

 

女性なら7級。5級も違いがあるなんて

性別による差別になる。

 
 結 論  (労働者X勝訴
 「ほとんど顔面全域にわたる瘢痕で人に嫌悪の感を抱かせる程度に達しない外貌の醜状障害について、男女に差を設け、差別的取扱いをすることは、違憲である。

外貌の醜状障害に関して男女で異なる取扱いをすることは可能か。

 ……障害等級表は、外ぼうの著しい醜状障害については女性を第7級、男性を第12級と、外ぼうの醜状障害については女性を第12級、男性を第14級としており、男女に等級の差を設けている。もっとも、労働省労働基準局長通達である認定基準(乙3)によって、男性のほとんど顔面全域にわたる瘢痕で人に嫌悪の感を抱かせる程度のものについては、第7級の12を準用することとされており、これは、同じ省内での判断として、厚生労働省令における障害等級表の定めを補完し、障害等級表と一体となって、その内容に従った運用をもたらすものといえるから、上記の認定基準によって、上記の程度の外ぼうの醜状障害についての障害補償給付に関しては、男女の差はないといえる。したがって、本件では、厚生労働大臣が、障害等級表において、ほとんど顔面全域にわたる瘢痕で人に嫌悪の感を抱かせる程度に達しない外ぼうの醜状障害について、男女に差を設け、差別的取扱いをしていること(以下、「本件差別的取扱い」という。)が、憲法判断の対象となる。
 ……以上によれば、本件では、本件差別的取扱いの合憲性、すなわち、差別的取扱いの程度の合理性、厚生労働大臣の裁量権行使の合理性は、立証されていないから、……裁量権の範囲が比較的広範であることを前提としても、なお、障害等級表の本件差別的取扱いを定める部分は、合理的理由なく性別による差別的取扱いをするものとして、憲法14条1項に違反するものと判断せざるを得ない
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 ……障害等級表は、外ぼうの著しい醜状障害については女性を第7級、男性を第12級と、外ぼうの醜状障害については女性を第12級、男性を第14級としており、男女に等級の差を設けている。もっとも、労働省労働基準局長通達である認定基準(乙3)によって、男性のほとんど顔面全域にわたる瘢痕で人に嫌悪の感を抱かせる程度のものについては、第7級の12を準用することとされており、これは、同じ省内での判断として、厚生労働省令における障害等級表の定めを補完し、障害等級表と一体となって、その内容に従った運用をもたらすものといえるから、上記の認定基準によって、上記の程度の外ぼうの醜状障害についての障害補償給付に関しては、男女の差はないといえる。したがって、本件では、厚生労働大臣が、障害等級表において、ほとんど顔面全域にわたる瘢痕で人に嫌悪の感を抱かせる程度に達しない外ぼうの醜状障害について、男女に差を設け、差別的取扱いをしていること(以下、「本件差別的取扱い」という。)が、憲法判断の対象となる。
 ……以上によれば、本件では、本件差別的取扱いの合憲性、すなわち、差別的取扱いの程度の合理性、厚生労働大臣の裁量権行使の合理性は、立証されていないから、……裁量権の範囲が比較的広範であることを前提としても、なお、障害等級表の本件差別的取扱いを定める部分は、合理的理由なく性別による差別的取扱いをするものとして、憲法14条1項に違反するものと判断せざるを得ない。

 
 外貌の醜状障害に関する障害等級認定基準について(平成23年2月1日基発0201第2号)

⑴ 「著しい醜状を残すもの」……原則として、次のいずれかに該当する場合で、人目につく程度以上のものをいう。①頭部にあっては、てのひら大(指の部分は含まない。)以上の瘢痕又は頭蓋骨のてのひら大以上の欠損、②顔面部にあっては、 rsh23D 以上の瘢痕又は rsh23E 以上の組織陥没、③頸部にあっては、てのひら大以上の瘢痕
⑵ 「 rsh23C の醜状……原則として、顔面部の長さ5センチメートル以上の線状痕で、人目につく度以上のものをいう
⑶ 「醜状」とは、原則として、次のいずれかに該当する場合で、人目につく程度以上のものをいう。①頭部にあっては、鶏卵大面以上の瘢痕又は頭蓋骨の鶏卵大面以上の欠損、②顔面部にあっては、10円銅貨大以上の瘢痕又は長さ3センチメートル以上の線状痕、③頸部にあっては、鶏卵大面以上の瘢痕

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 外貌の醜状障害に関する障害等級認定基準について(平成23年2月1日基発0201第2号)


⑴ 「著しい醜状を残すもの」……原則として、次のいずれかに該当する場合で、人目につく程度以上のものをいう。①頭部にあっては、てのひら大(指の部分は含まない。)以上の瘢痕又は頭蓋骨のてのひら大以上の欠損、②顔面部にあっては、鶏卵大面以上の瘢痕又は10円銅貨大以上の組織陥没、③頸部にあっては、てのひら大以上の瘢痕
⑵ 「相当程度の醜状」……原則として、顔面部の長さ5センチメートル以上の線状痕で、人目につく度以上のものをいう。
⑶ 「醜状」とは、原則として、次のいずれかに該当する場合で、人目につく程度以上のものをいう。①頭部にあっては、鶏卵大面以上の瘢痕又は頭蓋骨の鶏卵大面以上の欠損、②顔面部にあっては、10円銅貨大以上の瘢痕又は長さ3センチメートル以上の線状痕、③頸部にあっては、鶏卵大面以上の瘢痕 


過去問

rsh23BCDE従来、外貌(がいぼう)の醜状障害に関しては、女性について第7級(外貌に著しい醜状を残すもの)又は第12級(外貌に醜状を残すもの)、男性について第12級(外貌に著しい醜状を残すもの)又は第14級(外貌に醜状を残すもの)に区分されていたが、男女差の解消を図るため、「労働基準法施行規則及び労働者災害補償保険法施行規則の一部を改正する省令」(平成23年厚生労働省令第13号)により、rsh23Bこととなった。また、医療技術の進展を踏まえ、「外貌に著しい醜状を残すもの」、「外貌に醜状を残すもの」に加え、新たに第9級として「外貌にrsh23C醜状を残すもの」が設けられた。
 なお、「外貌」とは、頭部、顔面部、頸部のごとく、上肢及び下肢以外の日常露出する部分をいう。外貌における「著しい醜状を残すもの」とは、顔面部にあっては、rsh23D以上の瘢痕(はんこん)又はrsh23E以上の組織陥没に該当する場合で、人目につく程度以上のものをいう。
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B 女性の等級を基本として男性の等級を引き上げる
C 相当程度の
D 鶏卵大面
E 10円銅貨大


 

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