弘前電報電話局事件

弘前電報電話局事件

昭和62年7月10日最高裁判所第二小法廷
ストーリー
 Y公社の労働者Xは、電報電機械課に勤務していた。機械課では、労使間の合意により、日曜・祝日の最低配置人員は2名とされていたため、年次有給休暇を取得しようとする場合には、あらかじめ代替勤務希望者を募り、希望者があれば勤務割を変更して年次有給休暇が与えられる仕組みになっていた。
 他の労働者Aが代替勤務希望を申し出たため、労働者Xは、機械課長Bに対し年次有給休暇を請求した。Bは、労働者Xが当日予定されている成田空港反対闘争に参加するおそれがあると考え、Aを説得して代替勤務を撤回させた。そして、同日に労働者Xが出勤しなければ必要な配置人数を欠くとして、時季変更権を行使した。
 しかし、労働者Xは出勤せず、闘争に参加したため、Y公社は、労働者Xを戒告処分とし、当日分の賃金を支払わなかった。労働者Xは、これに対して、賃金の支払いと、戒告処分の無効を求めて、訴えを提起した。

その日に休まれると最低配置人員を下回ります。

年次有給休暇に対して時季変更権を行使します。

会社が行った時季変更権の行使は

労働基準法違反です。賃金を支払って

もらいます。

 

 結 論  労働者X勝訴
 使用者が、勤務割を変更して代替勤務者を配置することができたにもかかわらず、休暇の利用目的を考慮して勤務割変更のための配慮をせずに時季変更権を行使することは許されない。
スポンサーリンク

休暇の利用目的によっては、代替勤務者を配置する配慮をせずに時季変更権を行使することができるか。

 年次休暇権は労基法が労働者に特に認めた権利であり、その実効を確保するために付加金及び刑事罰の制度が設けられていること(同法114条、119条1号)、及び休暇の時季の選択権が第一次的に労働者に与えられていることにかんがみると、同法の趣旨は、使用者に対し、できるだけ労働者が指定した時季に休暇を取れるよう状況に応じた配慮をすることを要請しているものとみることができる。そして、勤務割を定めあるいは変更するについての使用者の権限といえども、労基法に基づく年次休暇権の行使により結果として制約を受けることになる場合があるのは当然のことであって、勤務割によってあらかじめ定められていた勤務予定日につき休暇の時季指定がされた場合であってもなお、使用者は、労働者が休暇を取ることができるよう状況に応じた配慮をすることが要請されるという点においては、異なるところはない。
答えを見る
 年次休暇権は労基法が労働者に特に認めた権利であり、その実効を確保するために付加金及び刑事罰の制度が設けられていること(同法114条、119条1号)、及び休暇の時季の選択権が第一次的に労働者に与えられていることにかんがみると、同法の趣旨は、使用者に対し、できるだけ労働者が指定した時季に休暇を取れるよう状況に応じた配慮をすることを要請しているものとみることができる。そして、勤務割を定めあるいは変更するについての使用者の権限といえども、労基法に基づく年次休暇権の行使により結果として制約を受けることになる場合があるのは当然のことであって、勤務割によってあらかじめ定められていた勤務予定日につき休暇の時季指定がされた場合であってもなお、使用者は、労働者が休暇を取ることができるよう状況に応じた配慮をすることが要請されるという点においては、異なるところはない。

 
 
 労基法39条3項ただし書にいう「事業の正常な運営を妨げる場合」か否かの判断に当たって、
 rkh27A  配置の難易は、判断の一要素となるというべきであるが、特に、勤務割による勤務体制がとられている事業場の場合には、重要な判断要素であることは明らかである。したがって、そのような事業場において、使用者としての通常の配慮をすれば、勤務割を変更して rkh27A を配置することが客観的に可能な状況にあると認められるにもかかわらず、使用者がそのための配慮をしないことにより rkh27A が配置されないときは、必要配置人員を欠くものとして事業の正常な運営を妨げる場合に当たるということはできないと解するのが相当である。そして、年次休暇の利用目的は労基法の関知しないところであるから、勤務割を変更して rkh27A を配置することが可能な状況にあるにもかかわらず、休暇の利用目的のいかんによってそのための配慮をせずに時季変更権を行使することは、利用目的を考慮して年次休暇を与えないことに等しく、許されないものであり、右時季変更権の行使は、結局、事業の正常な運営を妨げる場合に当たらないものとして、無効といわなければならない。
答えを見る
 労基法39条3項ただし書にいう「事業の正常な運営を妨げる場合」か否かの判断に当たって、代替勤務者配置の難易は、判断の一要素となるというべきであるが、特に、勤務割による勤務体制がとられている事業場の場合には、重要な判断要素であることは明らかである。したがって、そのような事業場において、使用者としての通常の配慮をすれば、勤務割を変更して代替勤務者を配置することが客観的に可能な状況にあると認められるにもかかわらず、使用者がそのための配慮をしないことにより代替勤務者が配置されないときは、必要配置人員を欠くものとして事業の正常な運営を妨げる場合に当たるということはできないと解するのが相当である。そして、年次休暇の利用目的は労基法の関知しないところであるから、勤務割を変更して代替勤務者を配置することが可能な状況にあるにもかかわらず、休暇の利用目的のいかんによってそのための配慮をせずに時季変更権を行使することは、利用目的を考慮して年次休暇を与えないことに等しく、許されないものであり、右時季変更権の行使は、結局、事業の正常な運営を妨げる場合に当たらないものとして、無効といわなければならない。
スポンサーリンク

過去問

rkh2005C労働者の年次有給休暇の時季指定に対し、労働基準法の趣旨として、使用者は、できるだけ労働者が指定した時季に休暇をとれるよう状況に応じた配慮をすることが要請されているものとみることができるとするのが最高裁判所の判例である。
答えを見る

 
 
rkh平27B2 最高裁判所は、労働基準法第39条第5項(当時は第3項)に定める使用者による時季変更権の行使の有効性が争われた事件において、次のように判示した。「労基法39条3項〔現行5項〕ただし書にいう「事業の正常な運営を妨げる場合」か否かの判断に当たつて、 rkh27B  配置の難易は、判断の一要素となるというべきであるが、特に、勤務割による勤務体制がとられている事業場の場合には、重要な判断要素であることは明らかである。したがつて、そのような事業場において、使用者としての通常の配慮をすれば、勤務割を変更して rkh27B  を配置することが客観的に可能な状況にあると認められるにもかかわらず、使用者がそのための配慮をしないことにより rkh27B  が配置されないときは、必要配置人員を欠くものとして事業の正常な運営を妨げる場合に当たるということはできないと解するのが相当である。そして、年次休暇の利用目的は労基法の関知しないところである〔……〕から、勤務割を変更して rkh27B  を配置することが可能な状況にあるにもかかわらず、休暇の利用目的のいかんによつてそのための配慮をせずに時季変更権を行使することは、利用目的を考慮して年次休暇を与えないことに等しく、許されないものであり、右時季変更権の行使は、結局、事業の正常な運営を妨げる場合に当たらないものとして、無効といわなければならない。」
答えを見る
代替勤務者

 

トップへ戻る