日本シェーリング事件

日本シェーリング事件

平成元年12月14日最高裁判所第一小法廷
ストーリー
 Y社は経営状況が良好でないことの一因が従業員の稼働状況にあると考え、稼働率を向上させるための方策を労働協約に盛り込もうとして、労働組合に対し賃金引上げ額を回答する際、80%条項の受諾を求め、労働組合はこの80%条項を含む賃上げ協定を締結した。


 そこで、80%条項による賃上げ対象除外者である労働者Xらが、賃金差額の損害賠償を求める訴えを提起した。

 

労働協約により、就労率が80%に満たない

人は、賃上げの対象とはなりません。

 

 

年次有給休暇や生理休暇も不就労になる

こんなルールは労働基準法違反です。

 

 結 論  労働者Xら勝訴
 80%条項を設けることは容認されるが、労働基準法等上の法律の権利に基づく不就労を稼働率算定の基礎とすることは公序に反し無効である。

賃上げにおいて就労率80パーセント以下の者を除くことはできるか。

 従業員の出勤率の低下防止等の観点から、稼働率の低い者につきある種の経済的利益を得られないこととする制度は、一応の経済的合理性を有しており、当該制度が、労基法又は労組法上の権利に基づくもの以外の不就労を基礎として稼働率を算定するものであれば、それを違法であるとすべきものではない。そして、当該制度が、労基法又は労組法上の権利に基づく不就労を含めて稼働率を算定するものである場合においては、基準となっている稼働率の数値との関連において、当該制度が、労基法又は労組法上の権利を行使したことにより経済的利益を得られないこととすることによって権利の行使を抑制し、ひいては右各法が労働者に各権利を保障した趣旨を実質的に失わせるものと認められるときに、当該制度を定めた労働協約条項は、公序に反するものとして無効となると解するのが相当である。
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 従業員の出勤率の低下防止等の観点から、稼働率の低い者につきある種の経済的利益を得られないこととする制度は、一応の経済的合理性を有しており、当該制度が、労基法又は労組法上の権利に基づくもの以外の不就労を基礎として稼働率を算定するものであれば、それを違法であるとすべきものではない。そして、当該制度が、労基法又は労組法上の権利に基づく不就労を含めて稼働率を算定するものである場合においては、基準となっている稼働率の数値との関連において、当該制度が、労基法又は労組法上の権利を行使したことにより経済的利益を得られないこととすることによって権利の行使を抑制し、ひいては右各法が労働者に各権利を保障した趣旨を実質的に失わせるものと認められるときに、当該制度を定めた労働協約条項は、公序に反するものとして無効となると解するのが相当である。

 

過去問

rkh2306C労働協約において稼働率80%以下の労働者を賃上げ対象から除外する旨の規定を定めた場合に、当該稼働率の算定に当たり労働災害による休業を不就労期間とすることは、経済的合理性を有しており、有効であるとするのが最高裁判所の判例である。
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