あけぼのタクシー事件

あけぼのタクシー事件

昭和62年4月2日最高裁判所第一小法廷
ストーリー
 労働者Xらは、いずれも運転手としてタクシー会社Y社に雇用され、労働組合の役員であった。Y社は、駅前において、会社を誹誇中傷するビラを配布したことなどを理由として、労働者Xらを懲戒解雇とした。
 労働者Xらは、当該解雇はY社が労働者Xらの組合運動を嫌悪してなされたもので不当労働行為に当たるとして雇用関係存続の確認と解雇期間中の賃金の支払いを求めて訴えを提起した。
 この解雇期間中に労働者Xらは他社のタクシー運転手として収入(中間利益)を得ていた。第1審、控訴審ともに解雇は無効としたが、解雇期間中の賃金の支払いについては判断が分かれた。

不本意ですが、解雇は無効となったので、

解雇期間中の賃金は支払います。

ですが、その間他の会社で収入があったのですから、

その分は控除します。

解雇期間中、お金を稼がないと

生活できないではないですか。

どうして控除するですか。

 結 論  Y社一部勝訴
 解雇無効となった場合において解雇期間中の賃金を労働者に支払うときは、その労働者が他で就労して中間利益を得ているならば、平均賃金の6割を下らない限度で中間利益を控除することができる。

解雇期間中の賃金を支払う場合に、労働者が他に職に就いていた場合、その利益額との関係はどうなるのか。

 使用者の責めに帰すべき事由によって解雇された労働者が解雇期間中に他の職に就いて利益を得たときは、使用者は、右労働者に解雇期間中の賃金を支払うに当たり右利益(以下「中間利益」という。)の額を賃金額から控除することができるが、右賃金額のうち労働基準法12条1項所定の rkh23C  に達するまでの部分については利益控除の対象とすることが禁止されているものと解するのが相当である
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 使用者の責めに帰すべき事由によって解雇された労働者が解雇期間中に他の職に就いて利益を得たときは、使用者は、右労働者に解雇期間中の賃金を支払うに当たり右利益(以下「中間利益」という。)の額を賃金額から控除することができるが、右賃金額のうち労働基準法12条1項所定の平均賃金の6割に達するまでの部分については利益控除の対象とすることが禁止されているものと解するのが相当である。

 
 
 ……したがって、使用者が労働者に対して有する解雇期間中の賃金支払債務のうち平均賃金額の6割を超える部分から当該賃金の支給対象期間と時期的に対応する期間内に得た中間利益の額を控除することは許されるものと解すべきであり、右利益の額が平均賃金額の4割を超える場合には、更に平均賃金算定の基礎に算入されない賃金(労働基準法12条4項所定の賃金)の全額を対象として利益額を控除することが許されるものと解せられる。
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 ……したがって、使用者が労働者に対して有する解雇期間中の賃金支払債務のうち平均賃金額の6割を超える部分から当該賃金の支給対象期間と時期的に対応する期間内に得た中間利益の額を控除することは許されるものと解すべきであり、右利益の額が平均賃金額の4割を超える場合には、更に平均賃金算定の基礎に算入されない賃金(労働基準法12条4項所定の賃金)の全額を対象として利益額を控除することが許されるものと解せられる。 そして、右のとおり、賃金から控除し得る中間利益は、その利益の発生した期間が右賃金の支給の対象となる期間と時期的に対応するものであることを要し、ある期間を対象として支給される賃金からそれとは時期的に異なる期間内に得た利益を控除することは許されないものと解すべきである。

 

過去問

rkh2104D労働基準法第24条第1項の定めるいわゆる賃金全額払の原則は、使用者が労働者に対して有する債権をもって労働者の賃金債権と相殺することを禁止する趣旨をも包含するものであり、使用者の責めに帰すべき事由によって解雇された労働者が解雇無効期間中に他の職に就いて得た利益を、使用者が支払うべき解雇無効期間中の賃金額から控除して支払うことはおよそ許されないとするのが最高裁判所の判例である。
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×

 

rkh平23C3「使用者の責めに帰すべき事由によつて解雇された労働者が解雇期間中に他の職に就いて利益を得たときは、使用者は、右労働者に解雇期間中の賃金を支払うに当たり右利益〔…(略)…〕の額を賃金額から控除することができるが、右賃金額のうち労働基準法12条1項所定の rkh23C  に達するまでの部分については利益控除の対象とすることが禁止されているものと解するのが相当である」とするのが最高裁判所の判例である。
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平均賃金の6割

 

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