片山組事件

片山組事件

平成10年4月9日最高裁判所第一小法廷
ストーリー
 労働者Xは、土木建築会社Y社に雇用され、現場監督業務に従事してきた。労働者Xは、体調不良を感じ、通院したところ、バセドウ病の診断を受けたが、Y社にはこのことを申出をすることなく、現場監督業務を続けた。
 その後、新しい工事現場での業務命令を受けたため、労働者Xは、現場作業に従事することはできない旨の申出をしたところ、Y社は、自宅治療命令を発した。
 これに対し、事務作業を行うことはできるとして、診断書を提出したが、自宅治療命令は持続された。この期間、事務作業に係る労務の提供は可能であったにもかかわらず、労務に服することはなかったため、労働者Xは、欠勤扱いとされ、その間の賃金を支給されず、賞与も減額された。
 労働者Xは、自宅治療命令は無効であるとして、その期間中の賃金及び賞与減額分の支払いを求めて訴えを提起した。

 

現場監督として働けないのなら、

自宅待機して下さい。

 

事務作業ならできるのに、

会社側が拒んだのだから、

賃金は支払ってもらいます。

 

 結 論  労働者X勝訴
 職種や業務内容を特定せずに労働契約を締結した場合、能力、経験、地位、会社の規模、業種、会社における労働者の配置・異動の実情及び難易等に照らして、Xが配置される現実的可能性があると認められる業務について労務の提供ができ、かつ、本人が申し出ているのであれば、労働力の提供があると考えられる。

私傷病で特定の業務ができなくなった労働者を、解雇することはできるか。

 労働者が職種や業務内容を特定せずに労働契約を締結した場合においては、現に就業を命じられた特定の業務について労務の提供が十全にはできないとしても、その能力、経験、地位、当該企業の規模、業種、当該企業における労働者の配置・異動の実情及び難易等に照らして当該労働者が配置される現実的可能性があると認められる他の業務について労務の提供をすることができ、かつ、その提供を申し出ているならば、なお債務の本旨に従った履行の提供があると解するのが相当である
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 労働者が職種や業務内容を特定せずに労働契約を締結した場合においては、現に就業を命じられた特定の業務について労務の提供が十全にはできないとしても、その能力、経験、地位、当該企業の規模、業種、当該企業における労働者の配置・異動の実情及び難易等に照らして当該労働者が配置される現実的可能性があると認められる他の業務について労務の提供をすることができ、かつ、その提供を申し出ているならば、なお債務の本旨に従った履行の提供があると解するのが相当である。

 

労働者の労務の履行が「全部」不能のときは?

 

「ノーワーク・ノーペイ」で、

賃金請求権はありません(民法536条1項)。

 

 

では、「一部」不能のときは?

 

労務不能の「一部」だけ、賃金請求権がない?

 

「債務の本旨に従った履行の提供」が行われていないので、

使用者は、「労務の受領を拒否し賃金支払義務を免れる」

ことができます。

 

 

労務不能がわずかでも

厳格に取り扱われるのは、厳しいですよね。

 

最高裁は、職種や業務内容を特定しない労働契約の場合、現に就業を命じられている業務について労働の提供ができなくても、他に労働力の提供をすることができる職務があり、企業としても配置転換が可能であり、労働者からも申出があるのであれば、債務の本旨に従った履行の提供があるものとして、使用者はその労務を受領すべきであると判断しました。

 


過去問

rih2601C労働者が職種や業務内容を特定せずに労働契約を締結した場合においては、現に就業を命じられた特定の業務について労務の提供が十全にはできないとしても、その能力、経験、地位、当該企業の規模、業種、当該企業における労働者の配置・異動の実情及び難易等に照らして当該労働者が配置される現実的可能性があると認められる他の業務について労務の提供をすることができ、かつ、その提供を申し出ているならば、なお債務の本旨に従った履行の提供があると解するのが相当であるとするのが、最高裁判所の判例である。
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